「紀州のドン・ファン」殺人容疑の元妻に無罪判決 控訴なら今後の焦点は?元刑事が解説
2018年に「紀州のドン・ファン」と称された和歌山県田辺市の資産家野崎幸助さん=当時(77)=に覚醒剤を摂取させ殺害したとして、殺人罪などに問われた元妻須藤早貴被告の裁判員裁判で和歌山地裁は12日、無罪判決を言い渡した。無期懲役という求刑から一転、無罪判決となったことを受け、同事件の発生当時から取材に当たっていた元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏はデイリースポーツの取材に対して見解を示した。
検察側は、須藤被告が野崎さんから毎月受け取る100万円や億単位の遺産が目当てで結婚し、完全犯罪を企てたと指摘。被告は事件当時、田辺市内の自宅で野崎さんと2人きりで、覚醒剤を摂取させる機会が十分にあったとしていたが、福島恵子裁判長は判決理由で「野崎さんが覚醒剤を誤って過剰摂取したことがないとは言い切れない。被告が殺害したとするには合理的疑いが残る」と指摘した。
小川氏は「状況証拠のみではあったが、非常に犯罪性が強いと思っていたので、『無罪』という判決には、正直言って驚いています」とした上で、「一番肝心な『覚醒剤をどのような方法で経口摂取させたか』という方法や理由が結果的に立証されていないという点が無罪判決となる要因として大きかったのではないか」と指摘した。
「疑わしきは罰せず」という結果になった。小川氏は「逮捕まで3年、(21年の)逮捕後も3年かかって迎えた判決でした。これまで検察は相当、捜査した中で、犯人は須藤被告しかいないという判断で逮捕したわけですから、他に第三者の犯人がいるという可能性は検察側も考えていないでしょうし、これから捜査することも難しいのではないか。第三者の存在は否定され、自殺の可能性も考えにくいということで、裁判所の判断は『誤飲』、つまり『誤って(覚醒剤を)飲んだのではないか』ということになっている」と解説した。
今後の焦点について、小川氏は「他に犯罪であることを立証する方法が出て来るかどうか。もしくは、これまでと同じ状況証拠だけで、大阪高裁で裁判を続けることになるのか。覚醒剤を野崎さん自身が購入していたとしても、その購入理由は何だったのかということにはまだ疑問が残っている。控訴されるならば、大阪高裁でその辺も審理されていくのではないか」と付け加えた。