「紀州のドン・ファン」不審死 須藤早貴被告無罪判決について弁護士が見解 「自分で摂取の可能性」消せず「消去法」に失敗した検察

 2018年に「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家野崎幸助さん=当時(77)=に覚醒剤を飲ませて殺害したとして、殺人罪などに問われた元妻須藤早貴被告(28)の裁判員裁判で和歌山地裁は12日、無罪判決を言い渡した。

 須藤被告への判決について、弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士がデイリースポーツの取材に応じた。

 正木弁護士は無罪判決の理由を「直接証拠がなく、状況証拠しかない中で、『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判の大原則に従い、検察官が集めた状況証拠を総合しても、被告人が罪を犯したと認めるには合理的な疑いの余地があるとの判断がなされた」と説明した。

 一方で、検察側は物的証拠がないことは承知の上で「消去法での有罪」を狙ったとの見方もされているが、この点には「裁判所は『被告人以外の第三者による他殺の可能性や自殺の可能性はないと言える』とし、この範囲では検察官の消去法は成功しています」と解説。一方で「しかし、野崎さんが自分で摂取した可能性を消去できなかったという点で、消去法に失敗したということだと思います」とも説明した。

 また野崎さんの死因は急性覚せい剤中毒で、経口摂取とされていることから「覚せい剤は非常に苦い物質と言われており、覚せい剤使用事犯で口から摂取する犯行は見当たりません」とし、「野崎さんの意思に反して致死量の覚せい剤を口から摂取させることが可能だろうか、という疑問が裁判所にあったのかもしれません」と推察した。

 今回の裁判は、裁判員裁判で行われた。この点に関しては「複数人の裁判員が評議、評決を行うことにより、無罪判決を出すハードルが低くなっていたのではないかとも考えられます」と指摘。一方で、裁判員の裁判後のコメントなどから「裁判員は混乱したり感情的になったりすることなく情報を共有し、不明点をきちんと理解したうえで評議を重ね、慎重に無罪の判断を下したようです。今回、裁判員裁判であることから無罪判決が出たという結論にはならないといえます」とした。

 検察側による控訴の可能性については「第一審で無期懲役を求刑した事案で無罪判決が出たときに、検察官が控訴しないことはほぼない」と回答。「結局、証拠をどう見るかの違いなので、検察官は自分の見方が正しいと主張して控訴すると予想されます」とした。

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