堀ちえみ 数奇な運命“ドジでのろまな亀”千秋と重なるリハビリ生活 ステージ4舌がん克服後初の歌番組出演
歌手でタレントの堀ちえみ(57)がステージ4の舌がんを克服し、このたび、大みそかに放送されるテレ東系「第57回 年忘れにっぽんの歌」(後4・00)の収録に臨んだ。観衆が見守る歌番組への出演は復帰後初で、感極まり大粒の涙を流した。一時は死をも覚悟したという、かつてのトップアイドル。自身の道のりが、かつて主演を務めたTBS系ドラマ「スチュワーデス物語」での、“ドジでのろまな亀”と評されながらキャビンアテンダント(CA)に採用された千秋役と重なるという。苦労を乗り越えての成功体験を語った。
演歌、歌謡界を代表する歌い手が集う人気歌番組に出演を果たし、観客に完全復活を印象づけた。病に伏せていた時は想像もできなかった。ペンライトを持ったファンから“ちえみコール”を受け、テレビカメラを向けられながら歌い続けた。
「もう経験できないと思っていたので、感無量です。昔の自分が蘇ったというか、私の中で一生思い出に残るシーンになると思います」
19年2月にステージ4のがんと診断され、舌の6割以上を切除した。「生きられるかどうかも大きな問題というか大きな壁であったので…」。命も危ぶまれただけに舞台に立つことは奇跡にも近い。出演者からも「おめでとう」と涙ながらに声をかけてもらった。
不安もあったが、共演した“花の82年組”で同期デビューの存在が心強かった。「(早見)優ちゃんがいてくれて、安心できた部分もありました。手術の前からずっと応援してくれて。同期はみんないい仲間」。復帰後のライブは度々見に来てくれ、LINEでも励ましをくれた間柄。勇気をもらい続けてきただけに感慨深かった。
リハビリ中の苦労の日々はかつて演じた「スチュワーデス物語」の主人公・千秋と重なる部分があるという。「私はドジでのろまな亀です」と自身を評する訓練生が、CAになるため村沢教官らに励まされ、一人前になる物語だが「数奇な運命というか不思議だなと。ああいう風に生きていくのは大変だと思っていましたが、自分とは正反対の役ではなかったと今、思います」とうなずいた。
リハビリ中の“教官”は自宅で発声練習などをしている時も「ちえみは運がいいから絶対大丈夫」と励ましの言葉をかけてきた夫で会社経営者の尼子勝紀さんであり、7人の子どもたち。「主人も子どもも、存在がすごく大きかった。最後まで頑張ったという背中を見せないといけないと思ってリハビリを続けました」と振り返る。
トップアイドル時代に幾度となく大舞台で歌ってきた経験がなせる技か、現在はしゃべる時よりも歌っている時の方が言葉がスムーズに出るという。
「テンポに乗せた方が言葉が明瞭なんです。若い時に培ったものは、どんな状況になっても思いだしてくれるんだなと思う時があります」
今年2月には、舌がん完治と診察され、現在は体調もすこぶるいいと言い切る。「来年は1枚、アルバムを出せたらいいなと。レコーディングって生で歌うよりもハードルが高いですけど、なんとかクリアできたので、はい、もっとうまく歌いたいと思っています」。さらなる向上心を持って聞いてくれる人々のためにマイクを握る。
◇堀ちえみ(ほり・ちえみ)1967年2月15日生まれ。大阪府堺市出身。81年、第6回ホリプロタレントスカウトキャラバンで優勝し、芸能界入り。82年にシングル「潮風の少女」で歌手デビュー。83年、TBS系ドラマ「スチュワーデス物語」に主演し大ブレーク。86年にはフジテレビ系「花嫁衣裳は誰が着る」で主演した。87年に芸能界を一時引退。医師と結婚し、3児をもうけるも99年に離婚。2011年に、現在の夫・会社経営者の尼子勝紀さんと3度目の結婚。血液型B。夫の連れ子を含む7児の母として奮闘中。