南野陽子 被災者にメッセージ「もう、自分に優しく過ごして」 #阪神淡路大震災から30年

 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災から間もなく30年を迎える。節目の日を前に、未曽有の自然災害を経験した各界著名人が当時を振り返る企画「あの日、あの時」がスタート。今回は兵庫県伊丹市出身で歌手、女優の南野陽子(57)が登場。震災当日は東京で撮影していたが、2~3カ月後には神戸に戻り生々しい被害を目の当たりにした。当時感じた震災に対する理不尽な思いを明かすとともに震災がもたらした絆についても語った。

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 デビューから10年を迎えて多忙を極め、震災当日も東京で撮影を行っていた南野。「朝、ドラマの現場に行く前に弟から電話があって『お姉ちゃん、テレビつけて!神戸が大変なことに!』って。その映像で知った感じでした」と振り返った。

 それでも、仕事の予定は動かせない。撮影現場に向かい、合間にロケバスに戻るたびにラジオに耳を傾け、広がり続ける被害状況に心を痛めた。「そこから数日間は、いろんな(被災者の)名前がテレビで上がって…。東京に出てきている同級生と連絡して、『誰々ちゃんはどうなった』とか『誰々さんのところは連絡がつかなくて』とか、いろんなことを交換しました」という。

 神戸に戻ったのは、震災発生から2~3カ月後の春だった。「まだ生々しい跡が残っていました。街並みが変わるとか、友人、知人たちの暮らしていた家がなくなるとか…。本当に『何でこんな目に遭うんだろう』って思いました」と正直な思いを吐露した。

 一方で、「後から思うと、より人と人とのつながりというか、震災がなかったら連絡が途絶えていたような友達もいたと思うんですけど、震災以降はもう、クラス全体、学校全体、街全体みたいな感じで人を思いやっている神戸の人を見て、いいなって思いました」と、震災がもたらした絆にも言及。「大切な人を亡くしたり、大切に作った家がなくなったり、仕事がなくなったり、心の傷は計り知れずあると思う。なかなかそこから抜け出せない人もいらっしゃると思います。だけど、もうそこばかりじゃなくて、季節に雪解けがあるように、『もう笑っていいんだよ』っていうのがあっていいのでは」とも指摘した。

 その思いの原点は、今年発生から14年を迎える東日本大震災の被災地にあった。「私は(宮城県)気仙沼の方たちと交流があって、NHKさんの『ありがとうを3・11に伝えよう委員会』という番組に毎回出ているんですけど、あの方たちは震災から10年たった時に、ボランティアで入ってきてくれた人や支えてくれた友人、家族といった人たちに、『もう、ありがとうって伝えていいんだ。笑うことに切り替えましょう』って言って番組を作られたんです。私はすごくそれが素敵だなって思って」という。

 そして、気仙沼の被災者に勇気を与えたのが、阪神・淡路の被災者であることも感じている。「神戸の人たちが東北の被災地にたくさん入られていろんなアドバイスをされたり、本当に誰よりも親身に寄り添っていらっしゃる。もうただ話を聞くだけで、それで『頑張れ!』とも言わない。ただうなずいて手を握るって人もたくさんいらっしゃったって聞いて、やっぱり誰よりも寄り添えるのが神戸の人だと思いましたね」と感に堪えない表情で話した。

 さらに「去年は能登地震もあって、神戸の人から暖かく親切にされた思いを、東北の人も能登でつないでいるっていうお話も聞いて、やっぱり経験した人にしかわからないことがあって、当事者の方にとったら心強いつながりですよね」と強調。その発端となった阪神・淡路の被災者へ「『もう、自分に優しく過ごしてください』って思います」と呼びかけた。

 その真意を「温度差は一人一人違って、震災の発生時ですら『震災の番組ばかりされても…』みたいな方もいたし、10年以上たって『もう忘れられた』って、すごく寂しい、苦しい思いをされたという方の話も聞きます。でも、もう執着する時期ではないのかな…って。苦しくても、あえて断ち切る強さみたいなものも必要なのかなって」と説明。「実際に地震そのものを経験していない私が言えることではないけど、どうせ限られた人生だとしたら、少しでも笑いが大きい方がいいなって思う」と語った。

 復興を果たし、その後の被災地のモデルケースともなった神戸の街。南野は「今も日本はいろんな土地で地震が来ると言われていて、そういう時だからこそ、あの大規模な震災を越えてきた神戸の人たちが参考にされる」としつつ、「神戸って、本当に魅力のある土地だと思うんです。30年たって、震災以外にも『やっぱり神戸でしょ!』って言われる何かを、もっとみんなでやりたいと思っているんです」と前を見据えて笑った。

 ◆南野陽子(みなみの・ようこ)1967年6月23日生まれ、兵庫県出身。84年に日本テレビ系ドラマ「名門私立女子高校」で芸能界デビュー。85年にフジテレビ系ドラマ「スケバン刑事2」の主役を演じ大ブレーク。同年「恥ずかしすぎて」で歌手デビューし、87~88年に「はいからさんが通る」「吐息でネット」などでオリコンシングルチャート8作連続1位を記録。映画「寒椿」(92年)「私を抱いてそしてキスして」(同)で日本アカデミー優秀主演女優賞。愛称は「ナンノ」。

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