【ヤマヒロのぴかッと金曜日】舞台って、こんなに面白いモンだったんだ

 テレビ司会者、ラジオパーソナリティー…、メディアの仕事が私の本業ではあるが、ここ数年は演劇の世界からお声がけいただく機会に恵まれている。きっかけは2019年の『フードコートのランスちゃん』(ABCホール)。脚本を手がけたメッセンジャー黒田氏に誘われ二つ返事で引き受けたが、80ページにも及ぶ台本を渡されたときはさすがに後退りした。

 ほぼ出ずっぱりなうえに膨大なセリフ量。経験もないのに覚えられるわけがない。負けん気の強い私は『これくらい朝飯前や』などとウソぶいてはいたが、公演が近づいてもなかなか覚えられない。『あかん!もう白旗上げよ』と思ってたら、なぜか本番の10日ほど前にスーッとせりふが入ってきたのだ。

 その日を境に、頭の中から文字が消え、自然に共演者とのやりとりを楽しめるようになったのだから不思議なものである。「ここはもっとこう表現したほうがいいかな」と、気がつけばいっぱしの役者気取りでのめり込んでいた。そして本番。千秋楽まで全てをやり終えたときこれまで味わったことのない達成感と高揚感に包まれていた。

 その後、演出を担当した大塚雅史氏からミュージカル『オズの魔法使い』(河内長野市立文化会館ラブリーホール)の仕事をいただき、さらにご縁があって昨年2月には奇才・木下半太氏の『お通夜イレブン』(高槻城公園芸術文化劇場)の主役まで務めさせてもらった。これまでご縁をいただいた全ての皆さんには本当に感謝しつつ、ふと考えた。

 舞台ってどうしてこんなに一生懸命になれるのだろう。ぶっちゃけ、お金にはならない。私のような門外漢は気楽なモンだが、舞台役者を生業として食っていける人はほんの一握り。ほとんどの劇団員はそれぞれ別の仕事で汗を流した後、限られた時間だけ稽古場にやってきて精も根も尽き果てるほどのめり込む。それでも皆んな生き生きとしているのだ。少しかじっただけでモノ言うのは僭越(せんえつ)だが、おそらく演劇を超える自己表現の場は無いのではないかと思う。

 家族にも見せたことのない感情、表情、喜怒哀楽その全てをぶちまけ、時には、役柄と自分自身を重ね合わせて嘆き悲しむことも。共演者と一体化して作り上げながらナマの息遣いを観客に届けるので、毎回反応も違う。「だからやめられないんだよ」と演劇を経験した人は一様にそう口にする。

 私もその一人。うまくやる事なんて考えない。あるがままの感情をストレートに表現するのが一番!なんてことを考えてたら、ひょんなことから今年の秋『じゃりン子チエ』で大阪松竹座の舞台に上がらせてもらえることになった。ウッソ!ホンマ?よっしゃ、ほな思いっきりやらせてもらいまひょ。(元関西テレビアナウンサー)

 ◇山本浩之(やまもと・ひろゆき) 1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。

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