館ひろしコラム(13)ボンドに学んだ
【おれタチの言葉】「さらば あぶない刑事」が公開されました。配給の東映によると、昨年公開の「007 スペクター」と比較して、興収30億円超えの見込みと予測を立てたそうです。好調な出だしで、よかったです。自信作ですから。
実は「007」シリーズが大好きで、「あぶデカ」のガンアクションは、ジェームズ・ボンドを相当参考にしてる。1作目の「ドクター・ノオ」でボンドが部屋に帰ると、中から音がしてるシーンがある。まず靴を脱いで、扉を開けるとき、しゃがむんだよね。
もし部屋に誰かいたら、自分の目線で探すじゃない?相手が目線を下にするまでの隙に倒せると思ってるわけ。だから、しゃがんで構えてる。鷹山も全部そう。見返してごらん、そうやってるから。
ボンドのショーン・コネリーも、「ゲッタウェイ」のスティーブ・マックイーンも、スタイリッシュなんだよ。今は「96時間」のリーアム・ニーソンとか、映画は面白いんだけど、俳優がスタイリッシュじゃない。「ブリット」のマックイーンが、マスタングからステンカラーのコートを着て降り立つ動きは、男が車から降りる仕草の見本だもんね。
コネリーたちは、演技してるわけでもないんだろうけど、スタイリッシュ。あれは俳優の持ってるものだね。キャラクターが持ってるものじゃない。みんな余計なことばっかりやるでしょ?サイレンサーを付けて、撃った後に銃口をフッと吹いたり。どうでもいいことなんだけど、かっこいいのよ。
前にもこのコラムで話したけど「さらば」は、台本をしっかりさせて、アドリブでコミカルにした。ボンドもコメディー化していって、ダメになったからね。あれも同じだと思う。コミカルなのは一時はウケるんだよね。で、みんなそっちに走るけど結局ダメなのよ。脚本はきっちり、つじつまの合うものにしないと。
ボンドもダニエル・クレイグになって、初期の路線に戻したでしょ?重厚でしっかりしたストーリーがあって、でも、ダニエルはさ、汽車にどーんっと乗った後、カフスをくいくいって直すんだよね。無駄なんだけど、スタイリッシュ。それなのよ。「あぶデカ」も一緒なんだよね。
◇舘ひろし(たち・ひろし) 1950年3月31日、愛知県名古屋市出身。74年に岩城滉一らとバイクチーム「クールス」を結成。75年に同チームの選抜メンバーでバンドを組み、ボーカルとしてデビュー。俳優としても76年に映画「暴力教室」でキャリアをスタート。84年にはソロ歌手として「泣かないで」が大ヒット。83年に石原プロモーション入り。主な出演作に「西部警察」や「あぶない刑事」シリーズ。身長180センチ、A型。