大物歌手 AIによって書かれた曲が嫌いとピシャリ「共有する能力ない」
歌手のニック・ケイヴ(65)は「台頭してきた恐ろしいAI」によって書かれた曲が嫌いだという。『イントゥ・マイ・アームズ』などのヒット曲で知られるニックは、ファンがChatGPTで作られた“ニック・ケイヴ風”の曲を数十曲送ってきたものの、熱意を感じないと語る。
ニックは、自身のブログ『ザ・レッド・ハンド・ファイルズ』の1月のエントリーにこう書いている。
「昨年11月の発売以来、沢山の人たちが、ある種のアルゴリズム的な畏敬の念をもって興奮しながら、ChatGPTが作った『ニック・ケイヴ風』の曲を送ってくれた。その数は数十にのぼる。言うまでもなく、私はこの技術に同じような熱意を感じてはいない。ChatGPTは永遠に未熟であることだろう。でもそれは常に前進し、常に高速化する方向性をもっている。おそらくそれがAIの新たな恐ろしさなのだろう」
またニックは、音楽は機械ではなく、生きて息をしている人間が経験する、本当の感情からの「苦しみ」に由来するものであるべきだと語る。
「歌は苦しみから生まれるもので、それはつまり、複雑で内面的な人間の創造への葛藤を前提にしているということだ。私が知る限り、アルゴリズムは感じることはないし、データは苦しみまない。ChatGPTは心の中にあるものではないし、どこにも行ったことがなく、また何にも耐えたことがないんだ。自分の限界を超える勇気を持たないし、限界を持たないから超越的な体験を共有する能力もない」
「ChatGPTの憂鬱な役割は、人間の経験がやがてどんなに低く評価され、取るに足らないものになったとしても、それを模倣する運命にあり、本物の人間の経験をすることができないことだ」
2005年にはモデルのボー・レイゼンビーとの間にもうけた息子ジェスロが31歳で他界し、2015年には15歳の息子アーサーが崖から転落して命を落とすという悲劇を経験したニックは、AIで作られた曲を「グロテスクなまがいもの」とレッテルを貼っている。
「マーク、曲をありがとう。でも世界中の愛と敬意を込めて、この曲はでたらめで、人間であることのグロテスクなまがいもので嫌いだ。とはいえ、ちょっと待て!読み返してみると、この曲の中に私に語りかけるような一節がある。『私の眼の中には地獄の炎が宿っている』『ニック・ケイヴ風』だというが、これはある意味真実だ。私の目には地獄の炎が宿っている。そしてそれはChatGPTだ」