藤岡弘 大ヒット主演映画「日本沈没」はアダムとイブの物語

 「仮面ライダー」(1971~73年)を終えてからも、番組で見せた身体能力が映像の世界で求められました。私はスタントマンを使わないアクション俳優として活躍の場が増えていったのです。

 主演映画では、私にとって強く印象に残る「野獣狩り」(73年)や「野獣死すべし 復讐のメカニック」(74年)。大ヒットした「日本沈没」(73年)をはじめ、「エスパイ」(74年)や「東京湾炎上」(75年)、「大空のサムライ」(76年)といった大作。俳優として映画史に残る作品に出演できました。

 「日本沈没」における、いしだあゆみさんと私は、ある面でアダムとイブでした。終盤、婚約者である2人はスイスへと脱出する飛行機に乗る直前に日本で生き別れとなります。スイス行きをやめて私は必死で彼女を探す。再会は果たせないまま、それでも最後に希望の光に包まれた私の表情で映画は終わる。

 最後に残った日本人として、日本民族が地球上から消えて欲しくないという希望は、あの当時、作家・小松左京先生の思いだったんですよね。どんな状況になっても日本民族の血は絶えないぞという思い。ロマンですよね。男女が離れても、またどこかでつながって日本人が作られるだろうという願いがあった。その思いから、最後に希望の光を残してくれたことに感動したんですよ。素晴らしいエンディングでした。

 日本は2発の核爆弾というダメージを受けながら、戦後、様々な難局を乗り越えて現在に至っています。近年では2011年3月11日の東日本大震災がありました。震災や津波…。人間は難局に直面して、忘れていたことを再び学習するという教訓です。「3・11」、あの日がまた近づいてきました。改めてその思いを強くします。

 武道を教えてくれた父がよく言ってたんですよ。「人間は甘えたら終わりだ。人に頼るな、己を頼れ、己の心と闘え。敵は周りにいるのではなく、己の心だ。自己の中にある怠惰な精神を越えろ」と。父は戦時中、銃弾に当たって生死の境をさまよいながら戦地から帰ってきた。実体験に基づいて、息子である私に教えたんだと。その当時は分からなかったのですが、俳優になってから、その言葉が身に染みたのです。

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