「珈琲道編(下)」被災地にドリップバック&日本流の茶せん珈琲
今回は2011年3月11日の東日本大震災の時にコーヒーを持参して被災地の方たちと交流し、現地で目の当たりにした“奇跡”についてのお話です。
それまで豆と粉でしか販売していなかった「藤岡、珈琲」を被災地の方に楽しんでいただきたいと、初めてドリップバックタイプを試作しました。本当においしく飲めることが分かりましたので、1000個を宮城県まで持って行き、本格的な味わいで皆さんに喜んでいただきました。
そして、石巻市にある石ノ森章太郎先生の記念館(石ノ森萬画館)を訪れました。私が演じた本郷猛の仮面ライダー1号の変身ポーズが銅像となって置かれているのです。
1号像はあの津波にも耐えていました。建物の2階あたりまで水につかったというのに、この像だけが流されていなかった。折れてもいない。他の像はやられていたのに…と、まず地元で話題になり、さらにネットでも情報が広がって「奇跡の復興シンボル」と言われました。現地で対面した時、ライダー像はきれいに磨かれて健在でした。コーヒーを通じて私も被災地で感動をいただきました。
私はコーヒーを1日5、6杯、ブラックでいただきます。富士山系の自然水をわかして「ありがとう」「おいしくなれ」とつぶやきながら一滴ずつドリップして、茶器に入れたコーヒーを茶せんでかき回して十分に空気を含ませてからたしなみます。最初は、その飲み方を笑われたり、否定されたこともありましたが、最近は言われなくなりましたね。
日本を訪れる外国人観光客は昨年、過去最高の2400万人以上だったとのこと。2020年の東京五輪に向け、今後もさらに増えていくでしょう。日本流のおもてなしの心は喜ばれると思います。外国の知人たちにも「こんな飲み方は初めて」と感動されます。
茶せんでかき混ぜることによって空気が入ってカプチーノみたいになり、まろやかになるのです。ぬくもりと薫りが広がり、泡と共によりおいしく感じられます。これからの時代、観光立国となっていく日本で、和洋折衷から生まれた“茶せんコーヒー”という「発見」を、おもてなしに取り入れていただけたらと思っています。