父の戦友・小野田さん、撃墜王・坂井さんから学んだこと

 私が20代の頃、小野田寛郎さんとお会いしたことが忘れられません。父に、生きるとは「退路を断って進むこと」だという武士道精神で育てられた私にとって、小野田さんには深い魂の部分で通じるところを感じました。

 戦後29年を経た1974年、小野田さんはフィリピン・ルバング島から日本に帰還されました。父の戦友でもあった小野田さん。当時、若手俳優として映画やドラマの出演が続いていた私は念願かなってお会いする機会をいただき、戦時中のお話をうかがいました。

 その後、小野田さんはブラジルに移住されて牧場を経営されます。私もブラジルに行って小野田さんを取材して映像にしたいと思い、その許可を得るために電話でお会いする約束をしました。

 その頃、小野田さんはブラジルから東京に戻られていて、2013年秋には「生きる」という著書を出版されます。送っていただいた本を読ませていただき、再会を楽しみにしていたのですが、その2カ月後に訃報が届いたのでした(※14年1月死去、享年91)。

 小野田さんと初めてお会いした後、私は東宝映画「大空のサムライ」(76年公開)に主演します。原作者であり、主人公のモデルでもある“撃墜王”坂井三郎さんが私を指名してくださったのです。

 坂井さんは私の父と同じ事を言われました。「日本人の原点であるサムライ魂、大和魂を忘れるな」と。それは戦地で散った方、生きて帰ってきた方にも共通した思いとしてあるのだと実感しました。この映画を機に、私は米国まで小型飛行機操縦の国際免許を取りに行きました。ゼロ戦の操縦はできますよ。

 日本で俳優活動の壁にぶつかった時、海外へ行く資金を貯めようと、作業現場でブルドーザーに乗ったこともありました。退路を断ってゼロに戻り、勇気を持って前に進むこと。父から教わった武士道的な見地から育んだ心の強さ。それは小野田さん、坂井さんにも共通していました。

 真剣に一つ一つのことに命がけで当たって砕けた先人たちにはすごいものがあると思います。今の若者にも武士道の神髄を知ってもらいたいですね。

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