【映画MC伊藤さとり】男好きする“男性”岡田准一
“男前”という言葉が似合うスター。それこそ日本映画界では高倉健さんのイメージが強いかもしれない。健さん亡き後、誰が日本映画をけん引していくのか?
昨年公開された『追憶』で、健さん映画を多く手がける降旗康男監督と名キャメラマン木村大作さんから「高倉健さんを彷彿させる」と言われたスター岡田准一さん。V6というアイドルグループから、俳優としての頭角を表し、役に入り込む中で、肉体を鍛え上げ、格闘技に没入し、本格的なアクションもできる“役者”として日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をはじめ、数々の映画賞を受賞している人物。私自身も長きにわたり、映画イベントでご一緒している俳優であり、その人気ぶりは知っていたものの、実際に会ってみると、男好きする“男性”だとさまざまなシーンで確信した人でありました。
特に今回の主演作『散り椿』では、日本映画界で60年にもわたりキャメラを回し続け、『八甲田山』をはじめとした高倉健さんや黒澤明監督の作品に名を連ねてきたレジェンド、木村大作さんの監督作品というので思い入れは人一倍。木村大作監督が、「大ちゃん」と呼ばれることが好きなことを共演者に伝えたり、イベントでも「テーマとか決め込まずに、皆で緩やかに映画について話そうよ」と笑いながら提案したり。木村監督は一目置かれるレジェンドな映画人だから、あくまでも映画に寄り添った舞台あいさつを、と思いやった様子を何度も目にしました。
懐に入っていく本気の付き合いで、笑いも忘れない気持ちの良い人だから、彼と関わった山崎貴監督(『永遠の0』)や波多野貴文監督(『SP』)なども「また一緒に仕事をしたい」を口々に言うのでしょうね。もちろん、木村大作監督もそのひとりで、時代劇『散り椿』では、岡田さんの殺陣は本物だと信じ、スタントなしの長回し。富山の自然の中で魅せる雪の中の殺陣は、絵画のような美しさ。男の美学が、時に硬派に、時に大胆に、フィルムに刻まれていました。
◆伊藤さとり(いとう・さとり)東京都出身。映画の記者会見や舞台あいさつを毎日のように担当する映画MCで、年間500本以上の映画を見る映画コメンテーター。TSUTAYA店内放送「WAVE-C3」で新作DVD紹介も担当している。