【大橋未歩】コロナ禍で自分を鼓舞する大好きな言葉「失ったものを数えるな…」
「大橋未歩のたまたまオリパラ!」
新型コロナウイルスが拡大してから、友達とのLINEの締めはだいたい「会える日まで生き抜こうね!」。オリパラ延期のみならず、命を確保することに腐心する日々が訪れるとは思いませんでした。
この緊張感をやわらげてくれるのが、私の場合キッチンでの1人ゲーム。冷蔵庫に今ある食材を組み合わせて、美味しい料理を1時間以内で複数作るという勝手に設定したルールと日々格闘しています。レギュラー番組の多くは休止中だし正直、時間制限の必要は全くない。でもルールがあった方が料理が格段に楽しいのです。
まず段取りをシミュレーションするために冷蔵庫を開ける。その瞬間からアドレナリンが溢(あふ)れ出す。相手を赤外線カメラで分析するターミネーターさながら食材ひとつひとつにズーム、凝視する。はは~ん、今日の敵はじゃがいも、かぼちゃにきゅうり、そして豚バラね。よし決まった。時計を見る。17時57分。ならば19時には食べ始めるぞ!と誰も聞いてないけど宣言してみる。
まず、きゅうりは薄切りにして塩をふって水を抜いて、その間にジャガイモを茹でる。もう1つの鍋では同時並行で玉ねぎとかぼちゃを煮てミキサーへ。生クリームと牛乳を入れて、かぼちゃスープに。そうだ使いかけの生姜で豚の生姜焼きにするぞ!
小池都知事から「3日に1度のスーパー買い出し」ルールが加えられて、さらに燃える毎日。でも食材の選択肢がなくなるにつれ弱気になることも。そんな時いつも私を鼓舞する大好きな言葉があるのです。
「失ったものを数えるな。残されたものを最大限に活かせ」
医師であるグッドマン博士の言葉。第2次世界大戦における傷病兵のリハビリのために、ロンドン郊外のストークマンデビル病院で大会を開催したのがパラリンピックの起源です。
何かを失うことから逃れられないのが人生。だからこそ生きがいがあるんだ。悟った気になり包丁の手が止まったが、すぐさま「冷蔵庫で人生悟るんじゃないよ」と我に返りました。
◆大橋未歩(おおはし・みほ)1978年8月15日、神戸市出身。フリーアナウンサー。2002年入社のテレビ東京時代にアテネ、北京、ロンドン五輪を取材。18年にパラ卓球アンバサダー就任。19年から「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」メンバー、パラ応援大使でも活躍。