【大橋未歩アナ】「楽しい」からパラスポーツを選択したら…
「大橋未歩のたまたまオリパラ!」
あなたは運動が好きだろうか。もしかしたら小学生の時にその答えを出してしまった人もいるかもしれない。かけっこで毎回アンカーを任される者と、そうでない者。さらに、数人に抜かされビリになる者。芽生えたちょっとしたコンプレックスはその後の人生で尾を引いて、スポーツから何となく遠ざかっていく。だからこそ、ある大学生が競技後、息を切らしながら興奮気味に放った言葉が自分のことのように嬉しかった。
「ずっと運動が苦手だったんですけど、これはすごく楽しかった!」
その競技とは、車椅子バスケや車椅子リレー、さらにボッチャなど。上智、早稲田、日体大など10数校の大学が参加して、パラスポーツを楽しむ祭典『第2回パラ大学祭』が行なわれた。白熱したゲーム展開に湧き上がる拍手やこぼれる悲鳴は運動会そのものだが、でも何かが違う。例えば車椅子バスケは、車椅子に乗った途端、身長差がほぼなくなって、いろいろな子にパスが渡る。そこに車椅子操作が加わり、全員が苦戦している。
車椅子リレーに関しては、私も参加したが、漕ぐと前に進む気持ち良さとコーナリングの難しさに夢中になり、ほぼ半分の年齢の大学生相手に互角に戦ってしまった。体格や年齢や、得意か不得意かという様々な類の烙印を自分に押してきたことを忘れて、楽しんでいる自分がいた。
主催者の、元パラアイスホッケー日本代表でNPO法人D-SHiPS32代表上原大祐(うえはら・だいすけ)氏は言う。「パラリンピックは『障害者スポーツ』と言われてきたことによって、健常者には関係ないものだと思われている。でも、パラスポーツも『選択』して楽しむものになってくれたら」
現状は、床が傷つくという理由で車椅子競技には場所を貸さないという競技場も多い。だが競技人口が増えれば風向きも変わるだろう。健常者も障害者も運動神経も関係なく「楽しい」からパラスポーツを選択したら、いつの間にかバリアフリー実現に一役買っていた、そんな社会ってなんかいい。
◆大橋未歩(おおはし・みほ)1978年8月15日、神戸市出身。フリーアナウンサー。2002年入社のテレビ東京時代にアテネ、北京、ロンドン五輪を取材。18年にパラ卓球アンバサダー就任。19年から「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」メンバー、パラ応援大使でも活躍。