(最終回)引退後の夢、それは老後のコミュニティー「橋村」を作ること
僕は歌手として集大成の時を迎えています。今後、活動できる時間も限られてきているのかなと感じています。ですので、今は引退後のことも考えています。
実はひそかな夢があるのです。それは、老後を迎えた方たちが、幅広い年代の方と交流できる施設というか、コミュニティーを作りたいと考えているのです。
今、年代的に最も人口が増えているのが熟年者なのです。では、そういう世代の方が、普段は何をやっているのか。実態は自宅にこもっているか、老人ホームにデイケアに行くかです。憩いの場が限られているのですね。
自分が起きたい時に起床して。庭に咲いている花を、摘(つ)みたい時に摘んで。そんな生活ができる、自由で憩いのあるコミュニティーを作りたいです。
自分が資本を出して経営するというビジネスの気持ちはないですが、そのようなものをプロデュースできればと考えています。例えば「橋村」というコミュニティーにして。そこに行くと若い子もいる。保育園も併設して、子供たちがたくさんいて老人と一緒に遊ぶ。それだけでなく、幅広い世代の人、老若男女が自由に集い合うようなものを作るのが夢です。
昔は日本でも長屋や隣組など、似たようなコミュニティーがあちこちにありました。そういう時代を思い出すのか、老後を迎えた人の中に今、こういうコミュニティー作りをやろうと、考えている人が出てきています。そんな方たちと手を組んで、何かできればと思う。
まあ、こういうことを思うのも、自分も人生の最後は、思うがままに生きたいというのがあるからだと思う。若くして歌手デビューし、長い間、時間やスケジュールに拘束される人生を送ってきました。もちろん、皆さんあってのことですので、ありがたいことだと思っています。でも、それだけに、最後くらいは1人で!と思う気持ちも強いのです。
とは言っても、まだまだ声が続く限りは頑張ります。この連載は、これが最終回となりますが、橋幸夫は歌い続けていきます。これからもよろしくお願いします。(おわり)