林寛子と書かれたサインはどのくらい?

 私のサインは、アイドル時代と今も変わっていない。

 デビュー前に、父から「アイドルになったらサインを求められるだろうから、今からどんなサインにするか、決めておこう」と言われ、たくさんの新聞紙を重ねて、何百回もサインの練習をさせられた。

 学校の宿題もあるというのに、なんでこんな特訓を受けなくちゃならないのかと、少々理不尽ではあったが、やはり、父の思惑通り、私はどこへ行ってもサインを求められる、立派なアイドルになった。そして、それ以来、私は山積みのサイン色紙を見ると、サイン恐怖症になるくらいだった!

 家に帰っても、母から「親戚に頼まれちゃったからよろしくね」と色紙がたくさんテーブルの上に乗っかっていた!学校へ行っても、クラスメートから、今度はノートやハンカチにサインをせがまれた。

 岐阜のミニコンサートレコード即売会のサイン会では、なんと1200枚もサインを書いた記録がある。その時、一人一人と握手もして写真も撮ったので、手はパンパンに腫れ上がり、笑顔もひきつっていたと思う。

 ずらりと並んだファンの人たちを見て、われながら人気者になるって、こんなにすごいことなんだ!と目をパチクリさせていた。

 「岐阜にこんなに人が集まるなんて初めてですよ!」私を呼んでくれたデパートの社長さんも大満足の笑みをうかべていた。

 「あの時書いてもらったサインです」と、今も私のお店にわざわざ持ってきてくださるファンの方がいる。40年以上も昔のサイン色紙を、ずっと大切にしてくださっていたとは、その思いが胸にジーンと伝わり熱くなった。

 全国に林寛子と書かれたサインはどのくらいあるのか?自分でもわからないほどだけど、時間の許す限り、これからもサインは書きます!そして、何十年後かに、そのサインにまた会えたらうれしいなぁ!

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