お年頃メーク「ちっともかわいくないわよ」
「今日の楽屋弁当は天ぷらだったの?」
「8時だョ!全員集合」の生放送が終わり家に帰ると、いきなり母がそう言った。
「ええ?違うけど、なんで?」すると、「テレビ見てたら、唇がギラギラ光っていたから、天ぷらの食べすぎかと思ったのよ」
高校生になったカンコもお年頃。当時流行していたリップグロスを初めてぬって、自分では相当イケてると思っていたのに!
「目の上もどこかでぶつけたの?」うっすらと青いアイシャドウを付けた時も、母はジョーク混じりに私をからかった。
両親の希望で4歳から芸能界に入った私。子役時代は、母に連れられてテレビ局や撮影所にいった。いわゆるステージママとは違って、母は現場に着くと一切顔を出さず、スタジオの隅のほうで私を見守ってくれていた。
そんな厳しい母は、アイドルとして売れっ子になったわが子を、心の中では喜んではいても、相変わらずチェックは怠らず、少女から大人になりかけて来た私のメークに目を光らせていた。
「あのね、あなたは良いと思っているのでしょうけど、そのメークはちっともかわいくないわよ。そんなことしなくても、奇麗に産んであげているのだから、お止めなさい」買ったばかりのリップグロスとアイシャドウは、一度使っただけでサヨナラ。
そう言えば、子役の頃の母の口癖は、「お調子に乗ってるんじゃないわよ」。
大人の中で仕事をしていると、子役はおだてられることが多いので、母なりに上手に手綱をコントロールしていたのだろう。♪「私もそろそろお年頃 おしろい口紅つけたいな するとね みんながステキだって言うの…」。
これは弘田三枝子さんの「子供じゃないの」。親から見れば幾つになっても、子供は子供。あれから40年。今ではお化粧しないと出掛けられない(笑)。