１９９５年の東京都庁小包爆弾事件で、殺人未遂ほう助罪に問われた元オウム真理教信者菊地直子被告（４３）は、２７日に東京高裁で逆転無罪を言い渡され、即日釈放された。高裁判決は２０年前の事件について「関係者の記憶もあいまい。テロに使う原料を運んだという認識を認めるには疑いが残る」と指摘し、焦点だったテロ関与の認識を否定した。

　弁護人は「非常に常識的な判決で、検察は上告しないでほしい」と話した。菊地元信者は同日午後５時すぎ、帽子を深くかぶって東京拘置所を後にした。

　菊地元信者は一審の裁判員裁判から無罪を主張。当時の幹部の指示で都内のアジトまで薬品を運んだことは認めたが、テロに使うとは知らなかったとしていた。

　東京地裁は、実行役の井上嘉浩死刑囚（４５）の「製造した爆薬を見せた際、『頑張ります』と応じた」などとする証言を根拠に懲役５年を言い渡した。高裁の大島隆明裁判長は「井上死刑囚の証言は不自然に具体的かつ詳細だ。自分に重要でないことが記憶に残っているのはおかしい」と信用性を否定した。

　菊地元信者は教団の陸上部に所属し、「広告塔」としてマラソン大会に出場したこともあった。事件後に特別手配されたが約１７年間逃亡、２０１２年６月に逮捕された。