キダ・タロー モーツァルトは嫌いでっせ…浪花のモーツァルト”の名付け親とは
作曲家のキダ・タロー氏(86)は“浪花のモーツァルト”として幅広い世代から親しまれている。関西人ならモーツァルトの顔は浮かばなくてもキダ氏の顔は浮かぶはず。「プロポーズ大作戦」や「かに道楽」など作曲数はおよそ3000。ABC「探偵!ナイトスクープ」で最高顧問も務めるなど、活動の幅は広がりこそすれ狭まらない。キダ氏に“浪花のモーツァルト”命名秘話を語ってもらった。
キダ氏と言えば“浪花のモーツァルト”としてすっかり定着している。当のモーツァルトと言えば「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」「トルコ行進曲」「きらきら星変奏曲」などどこかで聞いたことのある曲がいっぱい。キダ氏はどの曲が好きなのだろうか。
「音楽家としてのモーツァルトはあんまり好きやない。はっきり言って嫌いなんですよ」
ええっ!
「ああいうタイプの音楽を作る人はちょっとつきあいにくい。伏線を張っていって徐々に盛り上げるとか、あまり感動的ではないメロディーが続いているのに感動的になるという一種の手法があるんです、音楽には。そういうのは嫌いなんです。音楽というのはアタマからケツまで全部美しくなければいかん」
そうだったんですか。よもや「嫌い」という言葉が返ってくるとは思わなかった。まさかのモーツァルトへのダメ出し。では、どなたがお好きで。
「私の好みはショパンがばっちりです。あの人の音楽はどこをとっても全部美しく作られている。感情的に叙情的に。素晴らしい。でもね、ショパンがいい、モーツァルトが悪いという意味ではないです。音楽観の問題です。せやから、好き嫌いですわ。モーツァルトは嫌いなタイプ。ショパンは大好きなタイプ」
なるほど。では、どうして“浪花のショパン”と。
「ごろが悪いでしょ。浪花のショパンやったら」
そ、そんな理由ですか。ツッコんで聞くとキダ氏は“最高顧問”を務めるABCの長寿番組「探偵!ナイトスクープ」を立ち上げた同局の松本修氏の名をあげた。
「松本さんが大変なモーツァルトファンなんです。彼といろんな番組に関わりました。『プロポーズ大作戦』もそうです。彼が私の音楽を評して『モーツァルトに似ている』と。彼としてはもちろん褒めてくれたんです。そこから『浪花のモーツァルト』となりまして。彼が名付け親みたいな感じになったわけです。名付けてもらっていやなことはありませんし、そのままにしておいたらなんとなく広まったという。私が自分で名乗ったことは一度もないんです」