阪本順治監督 毎日ワイン3本の酒豪、健康診断イヤ…石橋蓮司主演の新作7・3公開

 阪本順治監督(61)が名バイプレーヤーの石橋蓮司(78)を主演に据えた最新作「一度も撃ってません」の公開が7月3日に迫った。デビュー作「どついたるねん」(89年)に始まり、今作が27作目となる。毎年のように作品を世に送り出す監督の私生活を尋ねると、とてつもない酒豪ぶりが浮かび上がった。

 -26本目の監督作「半世界」(19年)では40歳目前、39歳の男性3人の友情を描きました。監督が30代後半のときの作品に「ビリケン」(96年)があります。著書「孤立、無縁」(ぴあ)には「ビリケン」撮影前のエピソードとして「本当に逃げた。東北へ逃げハルシオンと抗うつ剤を飲み過ぎて救急車で運ばれた」とあります。

 ああ、それ…。はいはい(苦笑しながら顔をしかめる)。

 -思い出したくない記憶でしょうか。大変なストレスがあった。

 ものごとを昔から悪いほうへ悪いほうへ考えるタイプだったんです。監督になって、色々ちっちゃいことだけど作品の評価とか、自分の能力とか、色々重なってしまった。ちょっと睡眠薬を覚えてしまったんです。大量摂取するようになってからどんどんうつのほうに行ったと思うんです。そうですね…(高校時代に)家出して、将来を考えて背筋がぞっとしてる自分をなんとかしたいと思って頑張って映画監督になったにもかかわらず、また同じ逃避行をしちゃったわけです。それ…は…ほんとに…人に心配かけたですね。

 -監督業の重圧。

 それもあったし、自分の身の回りのこともあったんですよ。いろんなことが多重に重なったときに、薬の力を借りてしまった。考えすぎて睡眠障害になってしまって。今は白いちいちゃい粒を見たくないですよ。

 -現在はほぼ服用していない。

 睡眠薬じゃなくて導眠剤にしてます。眠れなくてしかたないときはね。でも、効かない。だからもう酒で寝るようにしてます。家飲みで倒れるまで飲んで寝る。

 -どのくらい飲む。

 うーん、今だいたい1日ワイン3本くらいかな。はは。

 -ワイン3本!

 ワイン2、3本プラス缶チューハイ何本かとか。

 -ほぼ毎日ですか。

 3本はきついなって思ったから2本にするようにしてますけど。

 -ほぼ毎日ワイン2本ですか。

 うん。それ以外にウイスキー。

 -監督、肝臓壊しますよ!

 大丈夫です!(声を太くしてゆっくり)はははは!

 -数値は。健康診断は受けてますか。

 21年、病院行ってません!

 -えー!僕が言うのもなんですが健康診断を受けて下さい。

 なんかいっぱい悪い結果が出てくるに決まってるじゃないですか。いやじゃないですか。

 -そんな…。

 すいません、「一度も撃ってません」が僕の遺作です。(両手を膝に置いて頭を下げ、笑う。関係者は驚きながら笑う)

 -いやあ、びっくりしました。著書「孤立、無縁」に3人の監督の名前をあげておられます。石井聰亙(現、岳龍)監督、井筒和幸監督、川島透監督。それぞれの監督から学んだことも。阪本監督として若い世代にご自身からどのようなことを学んでほしい。

 学んでほしいということはないけど映画を見てほしいなと思います。僕が作った映画をね。見たときに、還暦を超えたおやじがこういう切り口を持っていまだに何かに挑戦しようとしているなっていう。そこを見てもらえればいいですね。

 -若い人の作品は。

 若い子たちの映画をたくさん見ました。自主製作も。個人の責任でもって作家性の強いものを作ってるさまを見るとすごいなと思ったりします。じゃあ、俺がやれることってのはいい年をしてこんなキテレツなものを作りましたとか。落ち着かないで、いまだに何か試そうとしてるとか。僕はどっちかというとジャンルがばらばらじゃないですか。これからもそれを続けていきたい。1人の中から多方面に向かって、たくさんの興味を失わないでやろうとしてるっていうさまですね。はっきり言えば、「お年を召された」って言われたくないってことですよ(笑)。お年を召されて自己模倣に陥っていると思われたくないってことです。

 -たくさんの興味をということですが、「スクリーン」のインタビューで興味あるテーマやジャンルに「AI」や密室劇のSFと。

 AIには興味あります。今も形を変えてチャレンジしてるとこです。AIそのものではないですね。SFっていうのはその自由度みたいなものが、僕の中でずっとチャレンジしたいと興味があったんですけど。まあ、「団地」(17年)でちょっとUFO出しましたけど。

 -ラストシーンですね。びっくりしました。

 ああいうことじゃなくて、もっとなんて言うのかな。退廃的なものかな。

 -退廃といえば「ブレードランナー」が思いつきます。

 そういう実例を出すとああいうものになっちゃうからいやなんですけど…。子供の時、1人遊びが好きだったんです。屋根裏にこもって妄想空想が大好きな人間だった。だから映画監督になったんです。あの、SFというのは「サカモトフィクション」の略ですから。

 -「団地」のときは主演の藤山直美さんにちなんでSFのことを「サカモトフジヤマ」の略だとおっしゃっていたのでは。

 (監督爆笑しつつ)時代はコロナパニックになったり、これから世界はどうなるのかと考えると、そこに背を向けては通れないというのはあります。ものづくりの人間としては。社会派の作品を作るという意味じゃなくて、今どういう時代に生きているのかということを自分なりに解釈して、映画として表さないといけないというときに近いなと思ってます。何をするかは分からないけど。

 -次作を期待しています。写真を撮らせて下さい。

 はい。俺が阪神のユニホーム着たらデイリーの一面になったりするの?(笑)

(WHO’S WHO)

 阪本順治(さかもと・じゅんじ) 1958年、大阪府出身。横浜国立大学在学中より石井聰亙(現・岳龍)、井筒和幸、川島透監督の現場に参加。89年、赤井英和主演の「どついたるねん」で監督デビュー。芸術推奨文部大臣新人賞など受賞。00年、藤山直美主演「顔」で日本アカデミー賞優秀監督賞など受賞。他の作品に「大鹿村騒動記」、「半世界」など。阪神ファン。酒豪で愛煙家。

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