伝説のDJ小林克也ラジオデビュー50周年 美声の秘密、コロナ禍の生活を明かす
独特の渋い声はどこかあたたかく、曲を紹介するときの高音域での伸びはボーカリストそのものですらある。DJ小林克也(79)は1970年にラジオデビューし今年50周年を迎えた。80年代を代表する音楽番組「ベストヒットUSA」(現在BS朝日で金曜深夜0時)の司会を務めて洋楽ブームをけん引。番組はいったん終了したが再スタートし、現在も続く長寿番組となった。「See you next week!」など決めぜりふは健在だ。「ベストヒットUSA」収録終わりに伝説のDJを直撃した。
-「ベストヒットUSA」を80年代から見ています。昔と変わらないきれいな声ですが維持するために何かしていることは。それはないです。声は体の一部ですから体の調子が悪いと声も悪いんです。前々回の収録では声が裏返ったりして。おかしいなと思ったらやっぱり睡眠不足はこの年になるとたたっちゃう。とにかく睡眠が足りていれば大丈夫。睡眠不足は声にきます。
-どれほどの睡眠時間を。
まちまちですね。5時間のときもあるし、8時間のときもある。スケジュールによって違いますね。今でも東京エリアではラジオで金曜日に午前9時から午後6時の生放送をやっています。朝7時前に起きますから。
-新型コロナウイルスの影響で「ベストヒットUSA」の収録も一時、BS朝日のスタジオではない時期がありました。日常生活に変化は。
僕はラジオの仕事が多いんですが、そんなに影響はなかったですね。お客さんが集まって成り立つ仕事をしている人の場合は大変です。僕のまわりのミュージシャンが「暇で暇で」と言ってます。
-そういう方が多くいる。
本当に多い。中村雅俊もそんなことを言ってました。ただ、「言うのは恥ずかしいけど」って照れながら、かみさん(五十嵐淳子)と仲良しになっちゃったって言ってましたよ。
-一緒にいる時間が増えて。
そうそう。今までにかみさんとこんなに仲良しになったことはないんじゃないかって。だからめちゃくちゃ冷やかすんです(笑)。
-小林さん自身も奥様と過ごす時間が増えた。
僕の場合はあんまり変わんない。
-ベストヒットUSAの収録がしばらくぶりにテレビ局のスタジオに戻ったときは感慨深いものか。
スタッフの数が減ってスタジオに3人くらいしかいない。前は多いときで10人くらいでした。変な気持ちですよね。3人になったのを見てこれは冗談じゃないんだなって実感めいたものがありました。テレビ局の雰囲気も変わりましたし。
-政府による緊急事態宣言が解除され、プロ野球も始まりました。ひいきの広島カープは現状、低迷しています。
放送業界やレコード会社は昔、カープファンは1人くらいしかいなかった。今はけっこう増えてますけどね。広島はそういう寂しいアレですよね。こっち(東京)で応援してると。でも、最近はタクシーに乗ると「勝ってる?」で通じます。運転手の方が僕がカープファンと分かってくれて。「勝ってる」って返してくれます。
-球場には。
年に3回くらい神宮球場に行きます。今年はまだですけど多いときは5回くらい。勝率は五分五分ですかね。
-8月以降どういう展開を期待。
(抑えの)ピッチャーが悪いからあてになんないですもんね。今年は厳しいんじゃないですか。打のヒーローは堂林がいますけど。
-ベストヒットUSAは1981年にスタートしました。オファーがあった際、ラジオなどの仕事で忙しくテレビは拘束時間が長いから断ろうとしたと。それをマネジャー兼奥様が受諾した。小林さんは知らなかった。
そうです。オファーがあった後、断ったと思ってあるラジオ局に行ったら代理店の人たちが来てて「なんなの?」って尋ねたら「今日、打ち合わせですよ、知らないんですか」って(笑)。仕事受けたんだ、これは大変だと思いました。
-そのころはラジオはどれほど。
ラジオの本数が一番多かったのが1973年です。レギュラーを10本くらい。1日に3つか4つ仕事するんです。80年代もそれほど変わらないかな。テレビの仕事だと拘束時間が長いから1日に1つくらいになるんです。ずいぶん前のことですが亡くなったかまやつひろしさんから「ちょっとテレビ出てくれよ」って頼まれて音楽番組に出たことがあったんです。スタッフはカメラリハーサルをやったり色々とある。でも、僕らは何にもやることなくて本番のちょっと前にちょこちょこっとやればいいんだけど、ずっと待ってるわけですよ。「ああ、これは時間の無駄だな」って(笑)。出ないほうがいいなって。
-当初は半年くらいで終わるだろうと思っていた。
そうなんです。
それが89年まで続いて一度終わり、03年にBS朝日で再スタート、現在まで続く長寿番組となった。支持される理由は何なのか。See you next month!
〈ベストヒットUSA〉1981年にテレビ朝日でスタート。89年でいったん終了。03年にBS朝日で再スタート(金曜、深夜0時)。現在に至る。司会は80年代から一貫して小林克也が務める。ゲスト出演者にポール・マッカートニー、ミック・ジャガーら大物がいる。14日の放送では81年に行われたAC/DCの貴重なライブ映像を紹介。また、話題のカリフォルニアの3姉妹「ハイム」が登場する。TIME MACHINEのコーナーでは70年の大ヒット曲を紹介する。