志村けんさんの原点は藤山寛美さん
猫って意外とズッコケるんです。どこかに飛び上がろうとして失敗することもしばしば。そんな時は「何もなかったですけど…」って顔で格好付けてごまかすので、私にとって、猫はコントの師匠です。そして、普段、私が師匠(これ、あだ名なんです)と呼んで尊敬しているのが、志村けんさん。
志村さんとはフジテレビ系「志村X」(1996~2000年)や「変なおじさんTV」(00~02年)など、お仕事を6年間もやらせていただきました。
志村さんとは、私が30歳の頃に親友の可愛かずみちゃんを介して出会い、最初は飲み友達でした。ある日、食事に行った時、志村さんから「コントでもなく、アドリブに見えるような、ドラマ仕立てのようなものを作りたいので手伝ってもらえませんか」と相談され、私も「もちろんです!よろしくお願いします」ということで、笑いの道に導いて頂きました。
当時、志村さんは藤山寛美さんのビデオをよく観て研究もしておられたようで、「笑えるんだけど、どこか哀しくて切ない『悲喜劇』が好きなんだ」とよくおっしゃっていました。本人は必死で、すごくつらいという状態が他人から見ると滑稽で、そのギャップが面白いのだということを教えて頂きました。
酔っぱらいの設定であれば、台本には書かれていなくても「なんでそこまで飲んできたのか」という背景まで考え、想像力を持って演じないと笑いにはならない。ただ酔ってズッコケるしぐさが面白いのではなく、その人が酔っぱらわざるを得なかった背景を裏付けしてこそ、人間の必死さ、やるせなさが出るんだと。コントも芝居も一緒です。真剣にその役を構築させないと笑いにならないということを教えてくださいました。泣かせるよりも、笑わせる方が数十倍も難しいと言われる所以(ゆえん)でもあります。
志村さんとは上島竜兵君や神田川俊郎さんとスウェーデンに行ったことがあります。3日ほどの珍道中はテレビ番組になりました。志村さんはパスポートが入っているカバンをタクシーに忘れて大変だったんですけど、ちゃんと届けてくれて、スウェーデンは治安がいいなと、あの時は実感しましたね。
竜ちゃんは普段から明るい方ですが、志村さんはシャイで、自分からおちゃらけで話しかけるような人ではなく、場がシーンとなっていても平気な方。そして、仕事に関してはすごく繊細です。師匠からは、たくさん、勉強させていただきました。