満開の桜の下、山城さん柳井さんを思う
猫は死を悟ると、食べることを拒否し、この世への未練を断ち切って自らを消していく、そんな潔さを見せてくれます。死にざまの美しくしさはいつしか私の憧れとなりました。私が十代の頃からお世話になった、俳優の山城新伍さんは「猫」だったんだなと、ふと最近その最期を振り返り思うことがあります。
猫を語る時に、私はよく「自死する」という言葉を使うのですが山城さんも最後は全てを拒否し、友人関係も突然、何の知らせもなく断ち切られました。娘のように慕ってくださった私も連絡を取る術をなくしました。ある時、携帯電話を捨て「去る」ということを決められたのだと思います。
もともと、山城さんは猫好きというのが私との共通点で、娘さんと同い年で一人っ子という設定も似ていたせいか、本当にかわいがっていただきました。山城さんの監督作では映画「やくざ道入門」(1994年、菅原文太主演)やテレビドラマの火曜サスペンス劇場などにも出演しました。賑やかな場所が好きで、いつも友人に囲まれていたい寂しがりやな一面を見せてくれていましたから、そうしたお付き合いをパタッとやめたことに、どこか猫的な感じを受けます。
音沙汰のなくなった山城さんが養護施設にいらっしゃるという週刊誌の記事を見つけ、伝をたどって強引に面会させていただいた最後の短い時間は、山城さんの体調も良く思い出話をすることができました。元気に笑い会う時間は永遠に続くように思えますが、別れはいつも突然に訪れます。
この3月30日には、TBS系テレビドラマ「3年B組金八先生」などで知られる名プロデューサー、柳井満さんのお別れの会に参列してきました。昨年末、忘年会でお会いした際には80歳という年齢を感じさせない元気なお姿だっただけに、突然に届いた訃報は未だ信じられません。
「金八先生」に続き「青が散る」の祐子役に抜擢してくださったのも柳井さんでした。お別れの会で流されたたくさんの柳井さんの業績を眺めていると、80年代がいかにテレビドラマの全盛期であったかも思い出されましたが、そんな華やかな世界に、何もわからない14歳の少女が飛び込めたのは、全て柳井さんというプロデューサーとの出会いがあったからでした。いつも穏やかな笑顔で、それでいながら鋭い目が印象的な柳井さん。拾い上げていただいたその思いに恥じない女優としての道を歩んでいこうと、桜中学の卒業生として、満開の桜に約束した春です。