スウェーデン幻想に悩まされた十代の頃
スウェーデンには野良猫がいません。国がきちっと管理していますから、殺処分もなく、もちろんペットショップもありません。商品として命を預かってはいけないという倫理的な意識なのでしょう。それに比べ、日本は動物の命に対する意識がとても遅れていると言わざるを得ません。
今から50年前、インテリアデザイナーの両親が留学していたスウェーデンのストックホルムで、私は生まれました。生後10カ月で日本に帰国した後、9歳の時に再びスウェーデンに渡り、1年間を過ごしました。
当時は海外で暮らす日本人が少なかったこともあり、私と同年代の“帰国子女”といわれる人たちはどこか特別な目で見られることが多い時代でした。そんな帰国子女と呼ばれる人たちには、不思議な共通点があります。それは皆、日本人以上に日本人色が強いという点なのです。幼いながらも海外に出ると日本の美しさを意識し、着物をはじめ、折り紙など日本独自の文化に誇りを持つからかもしれません。
子供の頃に、理屈ではなく、日本人としての誇りを持つことが出来たこと、そしてその一方で、全く違う文化に馴染んで生活した体験はやはり私にとって貴重なものとなっています。
スウェーデンといえば、理想的な福祉国家として取り上げられることが多い国です。現実には抱えている問題もたくさんあるようですが、それでもやはり、自立した大人の国だなという印象は今でも訪れるたびに感じています。何十年も景色が変わらない都市計画一つを取り上げても学ぶことが多くあります。
最近ではスウェーデンというと、家具の「IKEA」や洋服の「H&M」、車の「サーブ」や「ボルボ」、そういったイメージでしょうか。私がデビューした1980年代はまだ「11PM」(※65~90年放送、東京の日本テレビと大阪の読売テレビが交互に制作していた深夜番組)などの影響が強く、「スウェーデン=フリーセックス」というイメージが浸透して多くの誤解に悩まされたこともたくさんありました。
当時10代の私への男性誌のインタビューも、性教育や、性に関する質問が中心でした。その度に、男性にとっては厳しい国ですよ、と伝えてきましたが、いまだに勘違いした憧れをスウェーデンに抱く男性は多く、お酒の席での話題は尽きません(笑)。女性が意志を持って自由に生きようとしている国であることは確かですけどね。