相楽樹「とと姉ちゃん」次女・鞠子を“卒業”しても小橋三姉妹の絆は永遠

 出演中の朝ドラ「とと姉ちゃん」もまもなく最終回。相楽樹は次のステージへ=東京都渋谷区
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 NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」がクライマックスを迎えている。昭和の激動を生き抜いた小橋家三姉妹の次女・鞠子を演じた相楽樹(21)は、最も無名の存在ながら、姉・常子(高畑充希)を支え、妹・美子(杉咲花)を見守る優しさあふれる役柄と、透明感あふれるたたずまいが注目され、ひときわ大きな飛躍を遂げた。撮影を終了した今、改めて朝ドラ女優として過ごした日々を振り返りつつ、意外な素顔も明かした。

 ◇   ◇

 8月下旬のクランクアップから約半月、昨年10月に始まった怒濤(どとう)の撮影を終え、今は少し穏やかな日々を過ごしている。

 「10カ月間毎日、局員のようにNHKに通って、自分の家族より長い時間、小橋家の家族に会っていました。今はまだアップから日がたっていないので、心にポッカリ穴があいたという感じではないけど、これからそれぞれの現場に行くようになれば、寂しさを実感すると思います」

 現場で会うことはなくなった現在、小橋三姉妹と“かか(母。木村多江)”をつなぐのはLINEだ。撮影中もメールを送り合った日々を思い返すだけで、思わず笑みがこみ上げてくる。

 「かかも三姉妹も食べることが大好き。NHK放送会館内にある全部の食堂のメニュー表を週の初め、火曜日に誰かが写メして回覧するのが習慣になっていました。『今週の献立です。それでは今週もよろしくお願いします』って。食堂のメニューが特別に豪華な日が月に1回あって、三姉妹で『○日は絶対にステーキ食べよう』って盛り上がりました。ランチに1枚のステーキをみんなでシェアして『とと姉』の再放送を見ながら食べたなぁ」

 「とと姉ちゃん」は朝ドラの定番である一人の女性の立身出世物語というより、三姉妹が戦前・戦中・戦後のさまざまな経験をへて、雑誌社を立ち上げ、それぞれが成長を遂げていく点に特徴がある。温かく見守る“かか”を含め、家族の物語だ。演じる役者陣も役柄さながらの絆で結ばれていた。

 「私は弟と妹がいる三きょうだいの長女。役作りには妹に心境を聞いたら『お姉ちゃんの失敗を見て、自分はしないように』と思っていたって(笑)。充希ちゃんは実際はひとりっ子だけど、とと姉みたいに暴走しない、頼りになるお姉さん。『樹は年下に思えない。いつも頼り過ぎちゃうわ』と対等に見てくれて、常子と鞠子の関係に近かったかな。(杉咲)花も本当はひとりっ子。でも食いしん坊で、甘えん坊で、末っ子そのものでした」

 自身のハイライトは8月中旬に放送された18~19週。鞠子が平塚らいてうに原稿の執筆を頼みに行き、承諾をもらう。そこで受けた言葉を胸にとめ、逡巡(しゅんじゅん)していた結婚に踏み切る。

 「唐沢(寿明)さんからも『鞠子が主演だから頑張れよ』と激励されて、自分もしっかり演じきりたいと思いました。平塚先生から『考えが変わるのはいいことよ』と受けたあの一言は、やっている時は鞠子と同じような心境だったので深く胸に来ました」

 嫁入り前夜の撮影では、かかと姉妹からサプライズも用意されていた。

 「テストが終わって本番の前に、3人が急に目配せして、手紙をくれたんです。寄せ書きで『鞠子が家を出ていくことが、寂しいです』と書かれていた。『ダメだよ~、こんなのもらったら泣いちゃうから』と本当に感激しました」

 放送前は高畑や杉咲と比べて、知名度は圧倒的に低かった。大抜てきに当初は戸惑いは隠せなかった。

 「出演が決まって、うれしかったのと同時に、大先輩に囲まれてポツンと一人で“すごいところに置かれちゃった。どうなっちゃうんだろう”と思った。でも私のことを知られていないからこそ、鞠子として見てもらえるはず。とにかくちゃんと演じようと言い聞かせました」

 開き直りとともに、心の芯で自信を潜ませることができたのは、豊富な小劇場での舞台経験に裏打ちされた懐の深さだ。

 中3の夏休み、現在のマネジャーにスカウトされた際は「もらった名刺の裏に、読んでいたファッション誌のモデルさんの名前があって、私も出られるかな」という軽いノリだった。しかし最初にオーディションに合格したのはファッション誌ではなくドラマ「熱海の捜査官」の生徒役。そこから演技に興味が湧き、下北沢の小劇場通いを始め、実際に出演も果たした。

 「最初に本格的に出演したのが劇団『競泳水着』。演出の上野友之さんは自由に芝居をさせる方だった。その次に出た劇団『Mrs.fictions』の演出家・中嶋康太さんはセリフの音程まで指示するカッチリしたスタイル。両極端の演出を経験して、演出の人に、芝居を合わせていきながら自分の個性を出していくことを学びました。そんな試行錯誤が楽しくなって、のめり込んでいったんです」

 プライベートでは意外な一面をのぞかせる。プロフィルの特技の欄には「ゴルフ」「ギター」とある。ゴルフは小5から中3まで近所の練習場のスクールに通って、ベストスコアは108。

 「今でも打ちっ放しにはよく行きます。ストレス解消になります。ギターは休日に一人で練習してます。好きなバンドの音源に合わせて、フレーズを弾いたり。Base Ball Bearやandymoriがお気に入りでライブにもよく行きますね」

 今後は「舞台もやりながら、映画で一人の監督さんとしっかり向き合うような仕事もしてみたい」と夢を広げる。三姉妹は旅立ちの時期を迎えた。それでも…。

 「これからも家に泊まりに行ったり、誰かが舞台に出てたら家族で見に行ったりすると思う。朝ドラ中も多江さんが別の仕事を並行してやっている時期があって、ロケ先から三姉妹に『元気?みんなに会えなくて寂しい。忘れないでね』ってメールをくれたことがあった。かかが遠くで頑張っているから、私たちもNHKでしっかりやろうと思えた。今後もそういう関係が続けば、うれしい」

 三姉妹はライバルではなく、いつまでも家族だ。

 ◆相楽 樹(さがら・いつき)1995年3月4日生まれ、埼玉県出身の21歳。2010年、テレビ朝日系ドラマ「熱海の捜査官」で女優デビュー。11年、「Miss Boys!」で映画デビュー。今年6月、「ふきげんな過去」にも出演。舞台は12年の劇団競泳水着「すべての夜は朝へと向かう」など4年間で9本出演。身長162センチ。O型。

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