福地桃子 誰もが陽のエネルギーを得られる存在に 大河「鎌倉殿」ビンタシーンが話題

 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で好演を見せる福地桃子(撮影・高石航平)
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 女優の福地桃子(24)が、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(総合、日曜、後8・00)で主人公・北条義時の息子にして、のちに三代執権となる泰時の妻・初を好演している。4日放送の第34回「理想の結婚」では、坂口健太郎(31)演じる泰時に強烈ビンタをお見舞いし、ネットは騒然。鮮烈な印象を刻みつけた若手実力派に舞台裏を聞いた。

 権力争いがおどろおどろしさを増す大河ドラマの中で、スカッとする夫婦関係に視聴者が沸いた。徐々に闇落ちしていく主人公・義時(小栗旬)に口出しした息子・泰時に対し、福地演じる妻の初がバシンと会心の一撃。感情の発露を体現する姿が鮮烈だった。

 それまでの登場時間は限られていたが、一気に注目を集め「撮影に入って日が浅く、ビンタも初めての経験。坂口さんはとても優しくてユーモアがある方なので、ビンタをして『すいません』って言ったら、すごく痛がったふりをされて『全然大丈夫だよ』って」と照れ笑い。

 今後も一喝するシーンがめじろ押しで「『え?』ってびっくりするような、私が申し訳なくなる、カツを入れるシーンがたくさんあります」と一端を明かした。ビンタ前には座長の小栗から「思い切りやっていいからね」と言葉をもらい、背中を押されたという。

 腹の探り合いがない、あけすけな関係が、逆にドラマの闇を照らす。心優しく、どこか頼りなくも映る泰時と、尻をたたく初の夫婦関係は、劇中のほっこりポイントでもある。

 福地は理想の妻像だと明かし「人のために本音をぶつけるエネルギーがある。自分のためではないところが魅力で、憧れるような役。身近に本音を言ってくれる人がいるのは、ものすごくいい関係ですよね。ビンタは時と場合によるかもしれないですけど」と未来の自分に思いをはせた。

 出演発表時に、新垣結衣が演じた義時の妻、八重の面影を感じるとコメントした。初は幼少期に八重に預けられ、成長してきた人物。新垣に憧れて現在の事務所に所属した福地にとって、不思議な縁を感じさせる。

 初めての大河。出演した時には、すでに八重は亡くなり、退場していた。自身で決めた裏設定があるという。

 「誰かに話したわけではないんですが、泰時さんと初の、この世代では、義時さんと八重さんができなかったことをやりたいなって思ってます。とても残酷な時代。成し遂げられなかった出来事の積み重ねが人生や歴史で、私たちの世代ではそれを生かしていきたいなって思います」

 かつての純粋だった義時と八重の関係に泰時と初を重ねる。体現することで視聴者に「そういう意味でも面影を感じてもらえるように」と考えている。「八重さんは亡くなってしまったけど、みなさんの中で心に残っている役だと思うので」

 2018年から女優業を本格化させ、NHK連続テレビ小説「なつぞら」でのヒロインの姉妹的な存在・夕見子役などキャリアを重ねてきた。演じる仕事を「勉強の場」だと語り、デビューした16年に“俳優学校”入学を果たしてからはや6年。年齢よりも落ち着いて見える抑制された口調で「大人になりましたね」とうなずいた。

 仕事で受けた刺激を私生活に還元しているという。公私を切り離す役者も多い中で、役を演じることは人間として成長するための行為だと考えている。

 「いろんな役柄に出会って、角度の違うお芝居をすることで、役からもらえるものがある。こういう部分がすてきだなって部分を見つけると、少しずつ自分が変わってきます。それがこのお仕事をやっていて興味が尽きない理由なのかなって。演じることは自分の生活にもつながっていて、お仕事と普段の生活の境目があまりないんです。1つの作品が終わる寂しさもあるんですけど、必ずまた次の作品で出会いがある。それが魅力的だなと思って過ごしてます」

 例えるなら、と挙げたのは20年放送のドラマ「女子高生の無駄づかい」。金髪ツインテールで、中二病全開の高校生・ヤマイを演じた。普段の自分とは離れた役だったが「内面をひっぱられる部分がある。新しい自分か、こういう考え方がすてきだなって思ったりする」と多様性を生み出したと語る。

 演じることで自分の中に幾重もの価値観を積み重ねていく。豊かな自己を形作っていくことが、福地の女優道であり、人生なのだろう。将来像を聞くと「心地よさのある人に憧れがあります」と表現した。

 「映像を見て『なんかいいな』ってあるじゃないですか?それは人によって違って、その人なりのタイミングで刺さる。溶け込めるような、そういう人に憧れます」

 水のような、そよ風のような、すぐそこにあって誰もが陽のエネルギーを得られる存在。そういう人間に私はなりたい、と目を輝かせた。

 ◇福地桃子(ふくち・ももこ)1997年10月26日生まれ。東京都出身。2019年にNHK連続テレビ小説「なつぞら」で、4度目の朝ドラオーディションを実らせ、ブレーク。主な出演作はドラマ「#リモラブ~普通の恋は邪道~」「女子高生の無駄づかい」、映画「あの日のオルガン」など。今年は映画「サバカン」や放送中のドラマ「消しゴムをくれた女子を好きになった。」に出演。チョーヤ「酔わないウメッシュ」の5代目イメージキャラクターを務める。

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