【ももクロ全力10年史3~笑顔の天下取り】演技、ソロコン…個々の力を磨く成長期に

 2014年3月、国立競技場公演の2日目が始まる前、マネジャーの川上アキラ氏はリーダーの百田夏菜子に告げた。「物理的な壁はここまでだと思う。ここからは君たちが引っ張っていくことになる」

 “大人たち”が大会場を壁として設定し、メンバーが立ち向かう図式で駆け上がってきた。国立が最高峰。新たな指針が求められていた。「それは俺たち(運営側)が作るものじゃない。自分の言葉で話してほしい」

 その数時間後。聖火台の前で百田は「みんなに笑顔を届けるという部分で、天下を取りたい」と宣言した。「もう悪い大人は、私たちの前に壁を作ってくれない」。“自立”への一歩を踏み出した瞬間だった。

 10年の初のホール公演からライブ演出を担当する佐々木敦規氏は「答えをもらったんです」とうなずく。わかりやすい壁なき後に不安があったからこそ「目標とするのはドリフターズであり、クレイジーキャッツであり、嵐でありっていう、国民に愛されるグループ。箱とかキャパではなく、笑顔を届けていく。そこを目指せばいい」と羅針盤を得た。

 国立を境に活動はより多彩になっていく。メンバー総出演の映画と舞台「幕が上がる」で演技に本格初挑戦し、百田は16年後期のNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」にレギュラー出演。高城れにと佐々木彩夏はソロコンサートを開催し、玉井詩織も音楽イベントで司会を務めるなど、個々の力を磨く成長期に突入する。

 ライブでは制作費5億円の巨大神社を作ったり、スキー場を舞台にしたりと奇想天外なステージを展開。ドリフが「8時だョ!全員集合」の公開収録を全国の市民会館などで行っていたことを念頭に、47都道府県ツアーもスタートした。

 「笑顔の天下」にゴールはない。川上氏も「いまチャレンジしているものの方が、より険しく、大きなもの」と語る。そして、結成10年目を4カ月後に控えた2018年1月。有安杏果が脱退を発表する。

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