海老蔵、父・團十郎さんに最後の別れ
3日に肺炎のため亡くなった歌舞伎俳優・市川團十郎(いちかわ・だんじゅうろう、本名堀越夏雄=ほりこし・なつお、享年66)さんの密葬が6日、都内の自宅で営まれ、約400人が参列した。喪主の長男・市川海老蔵(35)は「太陽のように優しい父でした」とあいさつ。常に温かく見守ってくれた父に別れを告げ、歌舞伎俳優としてさらなる高みを目指すことを誓った。
海老蔵は最後の別れに「今はむなしくさみしいです」と、本音を漏らした。19歳で父を亡くした團十郎さんは、歌舞伎宗家を守るために苦労を重ねたが、家族に対しては常に温かったという。海老蔵は「せがれながら、どこからその優しさが来るのか不思議でした」と、あらためて父の大きさに胸を打たれていた。
この日初めて、團十郎さんが亡くなった日の詳細を明かした。3日午前11時ごろに体調が急変し、海老蔵も病院に駆けつけた。普段、看病をしていた妹で舞踊家の市川ぼたんが仕事で外出していたため、母の希実子さん、麻央夫人、叔母の舞踊家・市川紅梅が代わるがわる声を掛け、團十郎さんも鼓動を保ち続けた。病院に駆けつけたぼたんが「ありがとう、愛してる」と語りかけると、おだやかに息を引き取ったという。
「家族全員で立ち会うことができて、父も何か感じてくれたと思います。きつい闘病生活だったと思いますが、父らしく笑顔で亡くなりました」。海老蔵は、最後まで家族がそろうのを待っていたかのような父に思いをはせた。
密葬は神道の形式で営まれた。戒名に当たる諡号(しごう)は「瑞垣珠照彦命(みずがきたまてるひこのみこと)」。出棺時には希実子さんが位牌に当たる霊璽(れいじ)を、ぼたんが遺影を、紅梅が神籬(ひもろぎ=神が降りてくる場所を示す榊の木)を持った。雪がちらつく寒空の下、参列者からは何度となく「成田屋(市川家の屋号)」とかけ声が飛んだ。
歌舞伎を愛し、家族を愛した名優であり父だった。海老蔵は「懸命に精進し、まい進致します」と誓った。