海老蔵、團十郎さん告別式で辞世の句
3日に肺炎のため亡くなった歌舞伎俳優・市川團十郎さん(享年66)の葬儀・告別式が27日、東京・青山葬儀所で営まれた。喪主を務めた長男の市川海老蔵(35)は團十郎さんが残した「色は空 空は色との 時なき世へ」という“辞世の句”を公表。さみしさを押し隠しながら「空を眺めたとき、父を思い出していただければ幸いです」と呼びかけた。歌舞伎関係者やファンら約2500人が訪れ、團十郎さんとの別れを惜しんだ。
團十郎さんの“辞世の句”を詠み上げた海老蔵は「父は自分の最後を悟っていたのだなと。あぁ、気付かなかった。大変申し訳なく、情けない思いがしました」と声を震わせた。
句は團十郎さんが体調不良で舞台を降板した昨年12月にパソコンへ残していた。般若心経の悟りの言葉「色即是空 空即是色」にも通じる、自身の死を予感していたかのような、永遠の世界に旅立つ思いが込められている。宇宙が大好きだった團十郎さんらしく空をテーマにした句でもある。海老蔵が「空を眺めたとき、父のことを思い出していただければ、この上の幸せはございません」と呼びかけると、会葬者の涙を誘った。
“予感”を自らの胸に収め、周囲に負担をかけないようにしていた團十郎さんに、改めて感謝した海老蔵。「父は若くして父(先代の團十郎)を失い、母を失い、白血病という大病を2度も患い、そして息子が私という苦労の絶えない人生でした」と自虐ネタで笑いも取りながら思いをはせた。
海老蔵ではなく本名の堀越孝俊としても父・堀越夏雄さんに感謝した。1月に意識を失う前にテレビ電話で姿を見たときには、体調が悪かったにもかかわらず、父は普段と同じ笑顔を見せた。「目を閉じると、そのときの笑顔がまぶたに焼き付いています。一生の宝物です」と振り返った。
3000本の菊やトルコキキョウ、バラなどで飾られた祭壇は團十郎さんの思いをくんだ質素なものだった。昨年11月に宣伝用として撮影された遺影が飾られ、祭祀(さいし)料(天皇陛下からの香典に当たるもの)、正五位、旭日(きょくじつ)中綬章、フランス政府から贈られた芸術文化勲章「コマンドゥール」が供えられただけのシンプルなものだった。
妻の小林麻央(30)はこの日、大事を取って欠席したが、3月には“跡継ぎ”が誕生する。今後は市川宗家の長として成田屋(市川家の屋号)を率いる海老蔵は「今日で歌舞伎界としては悲しいことは収めて、3月からはにぎやかに、少しでも明るい話題を提供できれば」と前を向いた。