佐藤浩市、父としては「ひどいよ」

 三国連太郎さんの長男で俳優・佐藤浩市(52)が15日、都内で日本テレビ系主演ドラマ「怪物」(今夏放送予定)の制作発表に出席。会見後に取材に応じ、亡き父への思いを語った。一時は確執も伝えられた親子関係は「僕と彼の間に介在したのは、役者という言葉だけ」と最期ま

で特異なものだったが、「おやじの死に顔は凛(りん)として、『三国連太郎』の威厳があった。本当にあの人は、役者として生きたんだな」と語り、浮かべたのは感慨の表情。涙をこらえ、ひとつの道を生き抜いた父親に最大の敬意を払った。

 「親子」という言葉では、言い尽くせない関係だった。三国さんの3度目の結婚相手との間に生まれたのが佐藤。三国さんの奔放な女性関係が原因で、佐藤の少年時代に父・三国さんと母は離婚。佐藤が三国さんと同じ役者の道を歩み始めてからは、両者の確執も伝えられた。

 報道陣に父親としての三国さんの存在を問われると、佐藤は「ひどいよ、そりゃあ。一般論としての親子の会話っていうのは、できないです。僕と彼の間に介在したのは役者という言葉だけ」と思わず苦笑いを浮かべた。

 三国さんの死に目には会えなかった。自宅で訃報を聞き、入院へ駆けつけた。「正直、覚悟をしていたので、悲しいという思いはなかった」と明かしたが、対面した父の表情は役者人生を全うした誇りにあふれていたという。「この1、2年の三国連太郎の中で一番、凛とした顔に見えて、不思議な威厳があって。涙は出ませんでした」と振り返った。

 父との思い出で常によみがえるのは、三国さんと同じ道を進むことを初めて告げた瞬間という。「早稲田駅のホームで電車に乗るときに、そんなこと(役者挑戦)を言った。三国は『そうか』と一言残して、電車に乗りました。それを一番思い出すかな」。

 96年には映画「美味しんぼ」で親子初共演を果たし、関係も雪解けへと向かっていった。最後に言葉を交わしたのは佐藤が映画の撮影で米ニューヨークへ旅立つ前に病院へ寄った今月1日で、「『外へ散歩に出たら寒い』とか、たわいもない話」と明かした。

 三国さんは生前、佐藤に「葬儀は密葬。誰にも知らせるな。戒名はいらない、三国連太郎のままで逝く」と伝えていたという。佐藤は「『三国連太郎』は俗名でも俗称でもない。でも、三国として逝きたかったというのは、本当にあの人は役者として生きたんだな、と感じました」と父の思いをくみ取った。父であり同志である、大きすぎる存在との別れ。気丈な受け答えの声とは裏腹に、瞳はこらえる涙で赤く潤んでいた。

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