佐藤浩市「最後にまた教えられた」
14日に急性呼吸不全のため90歳で亡くなった俳優の三国連太郎(本名・佐藤政雄)さんの葬儀・告別式が17日、静岡県沼津市の自宅でしめやかに営まれた。
葬儀は三国さんの遺志を尊重し、密葬で行われた。喪主を務めた長男で俳優の佐藤浩市(52)は「彼はきっとあっちの世界でも、映画を撮り続けると思います」と涙をこらえあいさつ。葬儀には親族らのほか、女優・大楠道代(67)、浅田美代子(57)も参列した。
役者一筋の人生を送った三国さんを、佐藤は名優として、父として、天国へと送り出した。出棺の際、三国さんの妻・友子さん、自身の妻子と並んで喪主あいさつ。「本日、三国連太郎、佐藤政雄、両名の葬儀・告別式を無事に執り行うことができました。ありがとうございました」と、三国さんがデビュー以来62年間慣れ親しんだ芸名と本名、あえて2人分の名前を挙げた。
10年前に撮影されたという遺影は、メガネをかけ、ヒゲを生やし、優しくほほ笑んでいる写真。生前に「戒名はいらない」と話していた三国さんの思いをくみ、位はいには「三国連太郎之霊位」と記された。
16日には通夜が営まれたが、佐藤はドラマ撮影を終えてから駆けつけたため、法要に間に合わなかった。「撮影を休むことは、故人の遺志に沿うとは思えなかったので、撮影に参加させて頂きました」。三国さんから感じていた信念を、貫いての選択だった。
だが、参加したロケ先でも、父のことが頭をよぎった。「三国はもう一度この現場に立ちたいと、どれだけ思っていたことだろう」と同じ役者として思いをはせ、「自分はこれから数千回、現場に立つと思いますが、『そのうち何回かはお前、今日のことを思い出してみろ。そしたら雑で不そんな芝居はできないだろう』。そう三国が言ってるような気がしました」と父からのメッセージを感じながら演じた。
反発した時期もあった。だが、俳優としては常に畏敬の念を抱いていた父。佐藤は「最後にまた、三国連太郎に教えられました」と唇をかみしめ、偉大な父と同じ俳優道を歩み続ける覚悟をにじませていた。