上方落語の復興に尽力し、１９日に肺炎のため８９歳で死去した人間国宝の落語家・桂米朝（本名・中川清）さんの通夜が２４日、大阪府吹田市の千里会館で営まれた。　歌舞伎俳優で人間国宝の坂田藤十郎（８３）、米朝さんとともに上方落語の「四天王」と呼ばれた桂春團治（８５）ら約１２００人が参列した。藤十郎は「（私が天国へ行くまで）待っててください」と語りかけた。２５日に同所で葬儀・告別式が営まれる。

　桂ざこば（６７）ら米朝一門の弟子がずらりと並んだ斎場の入り口には、うぐいす色の着物や愛用のキセル、香水、使い込んだ茶の革製トランクなど、おしゃれだった米朝さんをしのばせる愛用の品々が飾られた。

　喪主を務めた長男で落語家の桂米團治（５６）は「米朝は死生観を語る時、『生きてることと死んでることは変わらへんのや。魂は変われへんのや』と言っていました。おそらくまだそのへんにいるのでしょうね。長いこと長いこと寝込んでたんですけど、眠るようにすーっとあちらへ行きました」と笑顔を見せながら、話した。

　米團治に促され、あいさつに立った藤十郎は、落語や歌舞伎の枠を越えて上方を盛り上げようと尽力した時代を振り返り、「“和”というものを広めていけば、平和な人生が開けると、人間としての育ち方を（教えられた）」と話し、「向こうで待っててくださいね。でもあんまり早く呼ばないでくださいね」と呼びかけた。

　ひつぎの中の米朝さんは黒い紋付き姿。穏やかなほほ笑みをたたえる遺影は０５年に撮影されたもので、白いユリや菊で彩られた祭壇には、演芸界で初めて授与された文化勲章や、重要無形文化財保持者（人間国宝）や文化功労者認定の賞状などが飾られた。

　実家が神社の神主で、落語家になる前には米朝さん自身も宮司を務めていたことから、神式で営まれた。

　２５日の葬儀・告別式では、出棺の際に出囃子（でばやし）で米朝さんを見送るという。