“屈辱のM-1”をプラスに捉えていたマヂラブ・野田クリスタル ゲームのピン芸などに磨き
2020年の「M-1グランプリ」は、野田クリスタル(34)と村上(36)のコンビ・マヂカルラブリーが優勝した。2017年のM-1決勝では最下位の10位に終わり、審査員の上沼恵美子(65)からは「よう決勝残ったな」などと酷評された2人。終了後の会見でも、当時の思いを語っていた。
“地獄からの復活V”という、極めて明快なストーリー。それを成し遂げた2人には、言うまでもなく敬意を表したい。その一方で、昨夏に単独取材をした際、野田が「あの2017年」について、いささか違うとらえ方をしていたことを思い出した。
野田は昨年3月、自作したゲームのプレイ実況ネタで、ピン芸人ナンバー1決定戦「R-1ぐらんぷり」を制した。王者として行ったインタビューで、野田は「前の年が『M-1』の決勝に出て、コンビとしては調子が良かった。だから『R-1』もいけたのかなと思う。いろんなことに手を出せました」と発言。野田にとって17年のM-1は、決してマイナスの存在ではなかったのだ。
考えてみれば当然で、決勝で最下位とはいえ、5000組近い漫才師の中からベスト10というのは間違いなく快挙だ。全国ネットの高視聴率番組への出演で、名前も売った。実際、野田は「M-1の最中は『地獄だな、終わったな』ぐらいの感じだったんです。でも終わってみたら、なんやかんやで話題になっていて…。あんなにヤフーニュースになることはなかったので、スケジュールがびっしり埋まったんですね。そういうことを考えると、良かったんだなと」と、得たものの大きさを口にした。
もちろん、プロの芸人として、それが本意でないことも確かだろう。野田はすぐに、芸人としての研さんをスタート。「いろんなことに手を出せた」との言葉通り、ゲームを使ったピン芸に磨きをかけ、一気にR-1王者へとかけ上がった。その快挙を、野田は「M-1で決勝に残ったという実績があったから、R-1でも決勝に上がることができたというのはあるかと思います」と分析した。
ピン芸人日本一の座に立ったが、「活動のベースは、マヂカルラブリーにある」と断言した野田。R-1での躍進も、すべてはM-1のため。「漫才ってのは、言ってしまえば職業。ピン芸については、サラリーマンがやる“副業”といいますか、ちょっと当たればいいなっていう、FXとかに近いですかね」と笑っていた。
本業と副業の相乗効果で、見事にM-1とR-1の2冠を達成した野田。彼にとって2017年のM-1決勝は、決して「終わった」のではなく、むしろ「始まった」舞台だった。(デイリースポーツ・福島大輔)