元NMB・吉田朱里 元祖アイドルユーチューバー誕生のきっかけは「スキャンダル」と「行き詰まり」
アイドルグループ・NMB48の元メンバーで、現在はモデルとして活動する吉田朱里(24)には、もう一つ「人気ユーチューバー」という顔がある。2016年2月に公式チャンネルを開設し、登録者数は80万人を突破。“アイドルユーチューバー”の元祖的存在として成功を収め、昨年末のグループ卒業後も継続して数多くの仕事をこなす吉田の躍進の秘けつを聞いた。
公式チャンネルを開設した当時を、吉田は「そのころ私、アイドルとして一番終わってた時期だったんです」と笑って回顧した。「一番序列も下だった時期で、スキャンダル(写真流出)もあったし…。もう何やっても無理やろなと思っていた。もう男の人受け狙っても無理だし、王道アイドルは無理だなと思って…」と、モヤモヤを明かした。
NMB48の1期生として、デビュー当初から主力として活躍してきた吉田が、5年を経て迎えていた転換期。きっかけは、意外なところに転がっていた。「その年の11月ごろに、髪を切ったんです。その時に巻き方を研究して、かわいい巻き方があったんで、30秒ぐらいの動画をiPhoneで撮って編集して、ツイッターに上げたら結構バズった」。そこから30秒動画を上げ続けたが、短すぎて伝わらない部分が多かったため、「YouTubeで『メイク動画』っ調べたら、みきぽんさん(モデル・河西美希)の動画が見つかって、“美容系ユーチューバー”の枠があるんや!って知ったんです」という。
15年末に所属事務所の社長に相談。「『ユーチューバーになります!』って言いにいったら、『やればっていいんじゃない?』って(笑)、何からそろえたらいいのかなと思って、『事務所の方、誰か教えてくれないんですか?』ってって言ったら、事務所のデジタル担当さんに言ってくれて、機械とか全部買ってくださった。これは元取らなあかん!と思って、独学で勉強しました」と、見よう見まねのスタートを切った。
アイドル活動に行き詰まりを感じていた中で、「全部を諦めてしまうのはイヤだなと。それまで、何かをめっちゃ頑張ったかというと、大人の人の力で仕事をもらってやってきてたから、自分で何か頑張ってはいなかった。だから、これが無理だったら諦めて辞めようと思ってやってみた」という“背水の陣”が、予想以上の反響を生んだ。当時はまだ、YouTube配信を行うアイドルはほとんどいなかった時代。「すごいとこに飛び込んじゃった感じがあって、それは結構言われました。『アイドルでユーチューバーって、どういうこと?』って」と笑った。
「最初に再生回数が結構ぽんと伸びてすぐ1万回行って、気づいたら10万回。AKBグループじゃない戦いで自分に数字や成績つけられることが初めてだった」という吉田。「ツイッターのフォロワーさん、インスタのフォロワーさんも増えていって、『48グループ』という“村”の中でしか戦ってなかったのが、外に出たことによって分母が増えたことに気づいた」と、目にした新たな風景から刺激を受けた。
吉田が配信しているのは、メイクを中心とした美容系コンテンツ。「アイドルのメイク術なんて、ある意味タブーというか企業秘密みたいなもの。それを一発目に破ったというのは、大きかったんじゃないかなと。タブーだからこそみんな気になるし…」と、狙いは的中した。人気が爆発し、コスメブランド「B IDOL」も立ち上げ。こちらも好調で、3月22日には新商品「つやぷるリップ 新色 ましあがれマンダリン」「THEアイパレ 限定色 気ままなオレンジカーキ」「愛ラッシュマスカラ 全3色 アイドルブラウン・流し目ブッラク・デカ目ブラック」も発売する。
単にメイクを伝授するだけではなく、視聴者を楽しませるトークも必要となる。「台本も書かずにやってるし、自分で編集のことまで考えて、構成とかも全部頭の中でできるようになったから、他の仕事にもいい影響を与えてくれてます。それ以前に、アイドルを5年やって、バラエティーも撮影のお仕事もやって、握手会で男性受けも女性受けも考えて、自分の盛れる角度も知ってて、トーク力もMCとかで鍛えられたので、アイドルやって良かったなとすごく感じます」と、元々の“職能”も生かし、タレントとの相乗効果にもつなげている。(デイリースポーツ・福島大輔)