タツノコプロのガチガチ規制しないコラボ展開 ガッチャマン、ヤッターマン…「遊んでもらえたら」
「AnimeJapan 2021」が3月27日から30日にオンライン開催され、29日のアニメビジネスセミナーでは「クリエイター・企業・顧客を繋ぐアニメコラボ」講座が開かれた。注目される作品のキャラクター、世界観をどのようにしてコラボレーション企画に落とし込み、顧客との接点を作っていくのか。タツノコプロの取り組みを紹介する。
タツノコプロは漫画家であった吉田竜夫によって、1962年に創業されたアニメーション制作会社。同社からはコンテンツビジネス部副部長の中嶋俊介氏が登壇し、国内ライセンス営業について語った。
・宇宙エース(1965年)
・マッハGoGoGo(1967年)
・ハクション大魔王(1969年)
・科学忍者隊ガッチャマン(1972年)
・タイムボカンシリーズ(1975年~)
輝かしい自社オリジナル作品群が並ぶ中、約50作品という多数の「原著作権」を保有する。複数の社で出資を募る、現在主流となっている製作委員会方式ではあり得ないことだ。中嶋氏は「弊社で100%ライセンスを保有する強みがあります。他のキャラクターとは違い、自由な展開ができます」と語った。
高い認知率も強みだ。同社の独自調査(10~60代男女500人のアンケート)ではハクション大魔王、ヤッターマン、ガッチャマン、みつばちハッチが全体で80%を超える認知率を誇る。海外でも人気を博した作品が多いため、マス向けの広告宣伝展開との親和性が高い。
婚活サービスを展開するパートナーエージェントの広告では、「ヤッターマン」のドロンジョと手塚プロダクションの「ブラックジャック」がコラボし、各方面から注目された。「見せ方によっては若い人、今ヤッターマンを知らない方々にもダイレクトに訴求できると自信になりました」。他にも「白木屋」などを運営する大手飲食チェーンのモンテローザと「ヤッターマン」、医療機器を扱うオムロンヘルスケアと「ハクション大魔王」、自動車販売会社の熊本トヨペットと「ガッチャマン」、車検等を扱うマッハ車検と「マッハGoGoGo」のコラボが直近の事例として紹介された。
グッズづくりやイベント展開でも「100%ライセンス」の強みが生きる。特にデジタルコンテンツや雑貨では、ガッチャマンを“鳥化”するなどのキャラクターのディフォルメが行われ、その自由度の高さが際立っている。2018年に行われた四国4県周遊イベント「四国まるごと美術館」では、芸術家作品のモチーフ、地場産業の商品、イベントなどで大胆なコラボが展開された。キャラクターの多様な解釈が許された。
4月6日より「擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD」が日本テレビほかで放送されるなど、本業のアニメーション制作はもちろん継続中。各企業のアニメCMを多数受託することにつながっている。
100%ライセンスを押し出した自由な展開。各キャラクターの高い認知率。さらにアニメ制作の継続が、さまざまな好循環を生み出している。
ライセンスを契約する際は「我々としては最低限のルールだけお伝えするようにしています。ガチガチに規制するのは面白くない。前述のドロンジョのように、キャラクターの新たな一面を掘り起こすことにもつながります。遊んでもらえたらうれしいです」と中嶋氏。その上で「原作ファンの方に“あの推しキャラがこんなコラボをできるまで成長したのか”というような喜びのお声をいただくと、やってよかったなと思います」と語った。
ライセンスの貸し手、借り手、顧客を巻き込んだコラボの活性。老若男女を巻き込んだ新たな価値創造へと、つながっていく。
(よろず~ニュース・山本 鋼平)