「マンガ・アニメ」を「米・酒」と並ぶ名物に…新潟市マンガ・アニメ情報館の精力的な挑戦
ポップカルチャーの第一線で活躍する絵師100名の書き下ろし作品を一同に紹介する企画展示「絵師100人展10新潟編」が、新潟市マンガ・アニメ情報館で開催されている。開館7年となる同館はこれまで、マンガ・アニメを「文化」としてだけではなく「産業や観光資源」として町の活性化に生かすために様々な活動を行ってきた。同館の小池利春館長は取材に応じ、「新潟といえば『米』『酒』が名物ですが、それと並んで『マンガ・アニメ』を挙げてもらえるように当館としても様々な取り組みに挑戦していきたい」と意気込んだ。
新潟は「おそ松くん」「天才バカボン」などの代表作をもつ故赤塚不二夫さんや、「らんま1/2」「犬夜叉」などで知られる高橋留美子氏ら、多くの人気マンガ家の出身地である。新潟市は23年前から全国に向けたコンテスト『にいがたマンガ大賞』を毎年開催し、次代の創り手を応援してきた。2011年には「マンガ・アニメを活用したまちづくり構想」を打ち出し、同館とその姉妹館「新潟市マンガの家」が2013年に開館したという。また、首都圏でしか開催されないマンガ・アニメの展覧会などを新潟に誘致するなどし、両施設合わせて毎年14万人の来場者を獲得してきた。
「宇宙戦ヤマト」「エヴァンゲリオン」「機動戦士ガンダム」「おそ松さん」「ハイキュー!!」「犬夜叉」「鬼滅の刃」などの作品の大規模展示を年に7、8回開催し、隣接県はもちろん、関東圏、近年では海外からの来場も増えてきていた。小池館長は「開館から7年を経て、東京、大阪、愛知などと並び、マンガ・アニメ展覧会の巡回地としての新潟もファンの間でおなじみになりました。地方発のマンガ・アニメの文化発信地『新潟』のイメージに貢献できていると感じています」とこれまでの活動への手応えを強調した。
特に、大規模展示の中でも今年2月末から3月中旬まで開催された「TVアニメ『鬼滅の刃』全集中展」の反響は大きかった。「同作の展覧会を新潟で開催できたのは大変光栄でした。老若男女あらゆる年代の方々が来場されました。特にお子様がキャラクターのコスプレをして来られる方が多かったです。家族みんなが知っている作品はこのジャンルではそうそうありません。全日程日時指定席での開催でしたが、全ての日、全時間が開幕前でほぼ完売となり、会期中に人の流れが途切れることはありませんでした」と盛り上がりを振り返った。
この展覧会を通して同館を初めて知った新潟市民もいたという。「さらに存在の認知を高めていく努力をしなければならないと改めて感じました」とし、「『鬼滅』に負けないくらい有名な館になりたい。今後はコアなファンに向けた展覧会だけではなく、幅広く認知度の高い作品の開催も獲得していこうと思います」と今後の決意も述べた。
現在開催されている「絵師100人展-」は東京から始まる巡回展で、同館での開催は今回で10回目だ。「絵師100人展」のようなイラストレーターの集合展を開催できる機会は少ない。この展覧会には、いわゆる「萌え」テイストの女の子が描かれたイラストが並んでいる。小池館長は「来場者は若い男性だけでなく、年配の紳士も多くおられます。普段見慣れたタブレットやスマホのサイズではなく、大きな額の中で見せることで、魅力を全身で感じてもらう。創作や美術の価値基準を広げていく意味が同展にはあると信じています」と説明した。
今後の新潟のシティプロモーションについては「市民、地域、企業とのコラボレーションを取り入れ、全国を巡回する展覧会でも“新潟会場ならでは”な商品やキャンペーンを提供できるような仕組みを作っていきます」と具体的なプランを明かした。
最後に小池館長は「新潟は『クールジャパン』という言葉が生まれるよりずっと前からマンガ・アニメ文化を長く応援してきた街です。食べ物や景観など観光地としての魅力と新しい文化を支える土壌の新潟にぜひ足を運んでみてください。新潟市マンガ・アニメ情報館で『マンガ・アニメのまち新潟』をぜひご体感ください」とコメントした。
今、「新潟といえば?」と問いかければ多くの人は「お米」や「酒」と答えるだろう。しかし、そう遠くない未来、同じ質問に「マンガ・アニメのまち」と答える人が増加していれば、その結果はこれらの活動が実を結んだと言えるかもしれない。「絵師100人展10新潟篇」は5月9日まで開催される。
(よろず~ニュース・松田 和城)