「泣ける」「人生救われた」小説風メルマガ配信のダンボール会社 宣伝控えめ創作の原動力
株式会社アースダンボール(埼玉県北足立郡)は、製造販売を手がけるダンボールを題材にした創作小説風メールマガジン(メルマガ)を毎月2回配信しており、その内容が「泣ける」「ほっこりして良い」と話題を呼んでいる。同社のメルマガ編集長・メリーゴーランド氏と代表取締役社長・奥田敏光氏が「他社にはないメルマガ」の極意を語った。
企業や団体が主にマーケティングのため、顧客に対して定期的に一斉送信するメルマガ。一般的には商品の宣伝やキャンペーン情報発信のために使われることが多いが、同社はダンボールを題材にした創作物語を発信している。2012年から配信を始め、当初はダンボール“あるある”や時事ネタを発信していたが、16年頃から小説風の内容に変化したという。
内容は「ダンボール界の平和を守る正義のヒーロー」が登場する戦隊モノや「胸キュン」な青春ラブストーリー、家族の絆を描いた感動エピソードなど。SNS上では「泣ける」「ほっこりして良い」などと感想を投稿する人も見られる。さまざまなテイストの小説風メルマガを一人で創作しているメリーゴーランド氏は「ダンボールを通じて幸せになってもらいたい」と思い入れを明かした。
物語の中に「宣伝が入るとつまらない」(奥田社長)との考えから、作中で特定の商品を宣伝することはしない。メリーゴーランド氏は「書き上がってから『うちの商品とつながるな』と後から見つかった」際にはメールの末尾に関連商品の紹介を添えることはあるというが、ストーリーを意図的に商品に絡めることは少ないと話す。
多い時は数十通の感想メールを受けるという。メリーゴーランド氏は「メルマガそのものに返事をくれること自体が、(一般的に)たぶんそんなにないと思うんです。読者様が心の内側の何かしらを返してくれるっていうのはありがたい」と話す。その中でも「このメルマガによって人生救われました」というメッセージが印象深かったといい、「よく話を聞いたら、仕事を失い、離婚し、人生のすごくどん底にいた方がいらっしゃるんですね。その方がメルマガを読んでくださって、頑張ろうという気持ちになれたと。そのメルマガの一文を印刷して畳んで、財布の中にずっと入れてあるんだよって言ってくださった方がいて、その方のお声が今でも一番心に残っています」と振り返った。
約9年間続くメルマガは現在、1回あたり10万件を超える宛先に送られるという。同社の商品を一度でも購入すると定期的にメールが届くようになるほか、ホームページからも購読登録ができる。「今はダンボールを買っていないけどメルマガだけは読んでいる」(奥田社長)という読者の声もあるといい、その人気ぶりから過去のメルマガをまとめた電子書籍が3冊出版されている。
今月下旬に配信されたメルマガは第113号。「誰かを幸せにしたいという気持ちは自分の中でまだまだ育っている」というメリーゴーランド氏は「アースダンボールというものを通して、うちと関わってくれている皆さまに、私の書くもので幸せをお届けできたらなと思います」という決意を述べ、「そして1号でも長く続けたいです 」と目標を語った。
(よろず~ニュース・今井 佳奈)