「ルパン三世」と「天空の城ラピュタ」と「スーパーマン」の意外な関係 映画監督が解説

 今や世界の巨匠となった監督・宮崎駿。その宮崎駿が手がけた「ルパン三世」といえば『カリオストロの城』(1979年)である。「宮崎駿のルパン三世」=「カリオストロの城」のイメージが強いが、実は「ルパン三世 テレビ第2シリーズ」(1977年~1980年)でも2話の演出を手掛けている。それが「死の翼アルバトロス」(第145話)と最終回「さらば愛しきルパンよ」(第155話)である。スタッフクレジットは「照樹務」(てれこむ)となっているので、宮崎駿の監督作品と気付かない人は多いかも知れない。

  いずれもファンの間ではよく知られた名作であり、ルパン三世の人気投票では必ず上位に挙げられるエピソードである。当時は「本来のルパン三世らしくない」ということで批判的な意見もあったようだが、ジブリ作品に慣れ親しんだわれわれにとっては、そこに数々の宮崎駿テイストを見出すことができて楽しい。特に「さらば愛きルパンよ」は既視感たっぷりである。

  まずヒロイン。主人公ルパン三世以上に存在感を示す小山田真希は見た目がそのままナウシカそのもの。声優はナウシカと同じ島本須美である。また『カリオストロの城』のクラリスも演じている。

 小山田真希はロボット兵に乗り込んで流麗に空を舞う。空中飛行は宮崎作品ではおなじみの演出だ。そしてそのロボット兵の両手を大きく広げるフォルムと頭部のデザインは『天空の城ラピュタ』に登場するロボット兵そのものである。

  導入部でもテイストを感じることができる。大都会を優雅に舞うロボット。木々の間をすり抜ける動きは『魔女の宅急便』に似てなくもない。ロボットが宝石店へ到着すると、顔から光線を発して金庫を開ける。その光線の描写は『風の谷のナウシカ』の巨神兵を思わせなくもない。少々強引に他作品と結びつけたが、実はこの導入部、とある作品を元ネタにしたものなのである。

 それは意外なことに『スーパーマン』である。1941年から翌年にかけて放映された米国テレビアニメで、その第2話「謎の現金強奪ロボット」に登場するロボットの見た目と物語の導入部がそっくりなのである。街中に突如現れる両手を広げた飛行ロボットが銀行や宝石店を強襲し現金や宝石を奪い去って行く…。

 飛行ロボットの全体的なフォルム、飛行の際の動きと着地のポーズは『ルパン三世』『天空の城ラピュタ』のロボット兵そっくりで、宝石店を襲撃するシークエンスは丸々『ルパン三世』と同じである。現在だったら大炎上は免れないだろう。しかし、似ているのは当たり前で宮崎駿は書籍『THE ART OF LAPUTA』(1986年・徳間書店)の中ではっきりと『スーパーマン』へのオマージュであることを発言している。

 『スーパーマン』を見て、そのロボット兵の動きや演出を自分なりに再現したいという欲求がそうさせたのだろう。宮崎駿のこういった元ネタを発見すると、そのルーツを覗き見た気がして嬉しくなってしまう。巨匠も何かに影響を受けて、自分の演出を磨いてきたのだ。

 「パクリ」と「オマージュ」「リスペクト」は境界があいまいではあるが、おおらかな視線で見てみるのもいいではないだろうか。『スーパーマン』の模倣を経て、宮崎駿は滑らかな空中飛行シーンの演出に磨きをかけた。そして、その宮崎駿の演出はさらに多くのクリエイターに影響を与えていく。そこから新たな巨匠が生まれてくる可能性を考えると、あらゆる点と点はすべてつながっているように思うのである。

(フリーランス・沼田 浩一)

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