『バカボンド』宮本武蔵の庵は“競馬の聖地”と目と鼻の先にあった 二刀流の剣豪をしのぶ
人気漫画『バカボンド』の主人公である剣豪・宮本武蔵の庵(いおり)があったとされる藤原観音堂が、JRAの中山競馬場と目と鼻の先にあるのを知っていますか。中山競馬場といえば年末のBIGレース・有馬記念が行われる競馬の聖地です。今回、JR船橋法典駅(千葉県)から徒歩で向かったのですが、その2カ所は徒歩で10分ほどしか離れていませんでした。
吉川英治の小説『宮本武蔵』を原作にした井上雄彦の漫画『バカボンド』は、いわゆる二刀流、二天一兵法流開祖・宮本武蔵の青年期を描いて作品として有名です。エンゼルスの大谷翔平の“二刀流”も元々は宮本武蔵からきています。この作品は1998年から2015年まで、講談社の『週刊モーニング』に連載されていました。手塚治虫文化漫画大賞などを受賞し、単行本は計37巻、累計発行部数8200万部を突破している大ヒット作ですが、現在は休載が続いています。
バカボンドとは放浪者、漂白者という意味です。武蔵が東北地方を放浪し、木下街道を使って江戸への玄関口・行徳に向かう途中、父親を亡くした伊織と出会いました。後に武蔵の養子となる伊織は、吉川英治の『宮本武蔵』では三之助という名で描かれています。播磨の地侍・田原久光の次男とする説や武蔵の実のおいだったという説もありますが、15歳の時に、播磨国明石城主・小笠原忠真に近習として仕え、20歳で家老になりました。その後、豊前小倉15万石小笠原家で禄高(ろくだか)4000石という破格の出世を遂げた人物です。
二人が初めて出会ったとされる藤原観音堂は、地元では「身代わり観音」として親しまれています。小説では確か、佐々木小次郎との巌流島の決闘の前に伊織とこの地に住み、開墾しながら農業にいそしむという記述もあります。ここは浄土宗の寺院で、本尊の観世音菩薩立像は船橋市有形文化財に指定されており、行徳・浦安観音霊場三十三カ所の番外札所となっている場所です。
藤原観音堂は8キロほど離れたJR東西線・妙典駅近くにある行徳・浦安観音霊場三十三カ所の第1番・徳願寺の寺領です。実はこの徳願寺も武蔵と関係が深い場所です。徳願寺には武蔵の書や武蔵が書いた伝えられる「八方睨みの達磨」の絵は、寺宝として大切に保管されています。千葉県公式観光サイト「まるごとe!ちば」によるとこれらは毎年11月16日の「お十夜会」には、円山応挙筆と伝わる幽霊の絵などとともに公開されています。また、北条政子や徳川家とも縁が深いここ徳願寺には、武蔵を供養するための石地蔵まで建てられています。
新型コロナウイルス感染症が落ち着いたらかつての剣聖を忍び、武蔵と伊織が何往復もしただろう藤原観音堂と徳願寺付近を巡ってみたらいかがでしょうか。バカボンド気分が味わえますよ。
(デイリースポーツ・今野 良彦)