今年の夏は映画が豊作!『ワイスピ』『スースク』『孤狼の血 LEVEL2』など 伊藤さとりが紹介
8月は映画がアツい。
この夏、コロナ禍により映画館休館や撮影ストップが重なり、公開が延期となったハリウッド大作や日本映画が次々とスクリーンにお目見えしています。
大人気カーアクションシリーズ『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』では、日本が登場する胸熱シーンもあり、前作以上の“あり得ない”カースタントに興奮。更に『バットマン』や『スーパーマン』を生み出すDCコミックスのヴィランズが活躍する映画『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』は生ぬるくないR15+(15歳以上の方が鑑賞可能)で、ハーレイ・クインを始めとする一癖も二癖もある悪党達がスクリーンを所狭しと大暴れ。
しかもこの2作共にWWEのプロレスラー、ジョン・シナが出演というまさかのタイミングが重なり、ファンにはたまらない体験になること間違いなし。ちなみに『ワイスピ』では主人公ドミニクの弟ジェイコブを演じ、怒りをうちに秘めた力強いアクションで観客を脅かし、『スースク』ではピースメイカーと名乗る偽善者でマッチョな殺し屋をダサさ炸裂で熱演。とにかく破壊力あるハリウッドメジャーが楽しめる2021年夏なのです。
一方、邦画もこの夏は豊作。
日本を代表する名だたる監督の作品が登場。まずは『男はつらいよ』シリーズなどの山田洋次監督が松竹映画100周年記念作品として制作した『キネマの神様』が公開。この作品は撮影中、コロナにより急逝した志村けんさんの代役を沢田研二さんが務めたことで撮影が再開。作品自体からは古き良き日本映画の撮影風景など、懐かしい香りが味わえます。
その他にも8月は、力ある若手監督の作品や、豊田利晃監督の短編『全員切腹』、コロナ禍により苦境に立つミニシアターを応援すべく入江悠監督が立ち上がった『シュシュシュの娘』など、個性際立つ映画達が公開されます。
なかでも注目なのは、8月20日公開の映画賞受賞監督陣による作品のラインナップ。
一つ目は、『南極料理人』で新藤兼人賞金賞受賞他、『横道世之介』『モリのいる場所』など各賞を受賞する沖田修一監督の『子供はわかってあげない』。本作は上白石萌歌さん主演で高校生のひと夏の冒険を描いた爽やかな青春ドラマであり、人間の滑稽さや愛おしさを紡ぎ出していきます。
二つ目は、『凶悪』『彼女がその名を知らない鳥たち』他、監督した作品のほとんどが何らかの賞を受賞し、前作が日本アカデミー賞他受賞となった白石和彌監督の『孤狼の血 LEVEL2』。松坂桃李さんは刑事役を続投、共演の鈴木亮平さんは暴力団組織組長役で狂犬のような風貌になり怪演。その他にも豪華な俳優陣が熱量の高い演技を見せてくれます。
そして三つ目は、脚本で参加した『スパイの妻』はヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞、2021年12月公開予定の『偶然と想像』はベルリン国際映画祭銀熊賞受賞となる濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』。本作はカンヌ国際映画祭脚本賞含む4冠受賞という世界が認めた“5つ星映画”なのです。これは村上春樹さんの短編をもとに濱口監督が自ら脚本を手がけ、西島秀俊さん、三浦透子さん、岡田将生さん、霧島れいかさん他、海外のキャストも出演し、演出家が抱える亡き妻の秘密と演劇を通して見出す再生の物語となっています。
脚本はもとより、照明やカメラワークを活かした撮影方法や、俳優陣の言葉の紡ぎ方ひとつひとつが村上春樹ワールドを体感している錯覚に囚われるのです。
まさに2021年夏は、邦画洋画から豊潤な映画を味わい、幸せに満たされる劇場体験が堪能出来る季節。コロナ禍により奇しくも豊作となった映画は、日本映画の底力を感じる純度の高い作品ばかりなのです。
(映画コメンテイター・伊藤さとり)