「ラーメン刑事」津田寛治の原点は故郷福井の「ヤタチュー」 車内で両親と食べたあっさり味
俳優・津田寛治がCS放送「映画・チャンネルNECO」の主演ドラマ「ラーメン刑事」でラーメンを探求する刑事を好演している。8月と9月に各2作ずつ計4作の新作がオンエアされることを受け、津田はよろず~ニュースの取材に対し、幼い頃に接した出身地・福井県のラーメン文化や自身の人生でのラーメンとの出会い、その魅力を語った。
津田のラーメン原体験は故郷にあった。福井名物の「屋台ラーメン」だ。地元では「ヤタチュー」と呼ばれる独特の文化があった。
「僕の田舎には『ヤタチュー』というものがありまして、夜8時、9時くらいから、人けのない通りに屋台の中華屋さんがずらっと並ぶんです。屋台の中華そば、略して『ヤタチュー』。夜も更けてくると、『ちょっとヤタチュー行こうか』と車で乗り付ける。屋台だから、食べるスペースはそんなにないから、注文を受けると、屋台のオジちゃんやオバちゃんが車までラーメンを持ってきてくれて、みんな、車内で食べるんですよ。食べ終わったら丼を屋台に返す。それが子供の頃に両親とラーメンを食べた初体験じゃないですかね。塩ラーメンでしたね。あっさりした、おいしいラーメンでした。僕は福井市内ですが、発祥は敦賀市だったらしいです」
さらに話を聞くと、遊びに行った友人宅で、出前のラーメンが振る舞われることもあったという。1965年生まれの津田が小学生だった70年代の頃だ。
「友だちの家に遊びに行って、お昼になると、友だちのお母さんがいつもラーメンの出前を頼んでくれるんです。食べ終わると、残った汁にご飯を入れて雑炊みたいにして食べるとか、そういう風習のある家庭もあった。出前でラーメンを頼む家が僕の地元では根付いていましたね」
高校を卒業後、映画俳優を志して東京へ。下積み時代に都内で食べたラーメンも忘れられない。
「僕が上京したばかりの頃は、チェーン店もそれほどなく、今で言う『町中華』がたくさんあって、関東のしょうゆラーメンの味の濃さに最初、びっくりしましたね。実は東京に来て初めて食べたのが、とんこつラーメン。家の近所にあった『博龍(はくりゅう)』というお店で、いつも無口なオヤジさんがやっていた。味の濃いとんこつで、縮れ麺でした。癖になる味でよく通った」
ドラマでは、こだわりの名店を紹介しているが、実はチェーン店のシンプルなラーメンがお気に入り。9月には第5話として「日高屋」(初回放送26日)が初登場する。津田は「日高屋さん、幸楽苑さん、バーミヤンさん…といったチェーン店のオーソドックスな普通のしょうゆラーメンが僕にとって『待ってました!これこれ!』的な味なんです。新しい味を発見するのも楽しいですけど、昔からある中華そば的な味を好んで食べています」と明かす。
今年のカンヌ国際映画祭に出品され、10月8日から全国公開される新作映画「ONODA 一万夜を越えて」では小野田寛郎旧陸軍少尉の壮年期を演じた。役作りのため、1年半で13キロほど減量するストイックな生活でもラーメンを思い描いた。
「食べ物をかなり封印して、スムージーくらいしか口にしない日々が続きました。この映画の前にも、やせてなきゃいけない役がいくつも続いたので、日常的にサウナや減食を掛け合わせて減量した。食べないことに慣れると転げ落ちるように体重が減っていくので、それはそれで恐いんです。このまま、動けなくなったらどうしようみたいな。そんな時でも思い浮かぶラーメンという食べ物には、お腹が減ったから食べるというより、あの味をまた味わいたいから食べたいという欲望のようなものがある。だから、ラーメンを食べられなかったのはきつかったですね」
減量から解放されるとラーメンを食べた。
「家の近所にある『れんげ食堂』というチェーン店のしょうゆラーメンが好きなので、いの一番にそこに行きましたね。そうそう、これ!みたいな(笑)。実は世の中で一番好きな食べ物は、日本そばなんです。でも、そばはカロリーがそんなに高くないので減量中でも食べられた。ラーメンは高カロリーで力を付けるための食べ物だから、減量中は食べられず、ひと区切り付いたら真っ先にラーメンという感じはありましたね」
単に空腹を満たすというより、「あの味」という記憶を再確認したい欲望に突き動かされる食べ物。津田が体感した「ラーメンの魔力」はそこにある。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)