さいとう・たかを氏は原発事故もコロナ禍も予見!?父・なべおさみも驚く「先見の明」なべやかんが追悼
さいとう・たかを先生がお亡くなりになった。先生を生で見たのは、永井豪先生の作品に出演した時、ダイナミックプロ新年会にお呼ばれした時だった。会場には様々な著名人がいらしたが、中でも特別な存在感だったのが、さいとう・たかを先生。基本は立食パーティーだったのだが、中央の丸テーブルに先生だけがドカッと座られていて周りには誰もいなかった。
一緒に行った仲間たちと「さいとう先生だ!」と大盛り上がり。その中の一人が「先生に写真を撮ってもらおう」と言ったので、「無理だよ」と制したが、「ダメ元で言ってみる」と先生に近付いた。その途端、周りから大勢が駆け寄り、仲間は取り囲まれてしまったのだ。まるで大統領に襲い掛かる男を取り押さえるSPのような動き。その動きに我々は固まってしまった。騒動に気が付いた先生が振り向き、そして立ち上がり写真を撮ってくれた。この時の先生の顔はとても優しい顔だった。
この日の帰り、仲間たちと「リイド社は先生あっての出版社だから、もしも先生が亡くなったら、数年隠すのでは?」なんて、不謹慎な話をしてしまったくらいだ。
父・なべおさみは『ゴルゴ13』の愛読者だ。昔からずーっと読み続けている。東日本大震災の原発事故の時、そして、コロナウイルスが騒ぎになった時も「ゴルゴ13は既に予言していたぞ」と大騒ぎしていた。原発事故をゴルゴが解決する話は、事故を起こした時の対処法が描かれていた。コロナウイルスの話は、蝙蝠(コウモリ)の持つ危険なウイルスを持ち帰った人間がいるので何とかして欲しい、といったものだ。
父・おさみが「漫画の情報源はCIAじゃないか?」と疑うくらい、先見の明があり、的確な所が驚きだ!先生の情報源が気になるにつれ、もしかしたら今後描こうとしている物語の中には、この先、世界で起こる事件が既に描かれているのではと勘繰ってしまう。200巻以上続いている事もすごいが、先が見えている事もすごい事だ。秘密をばらされたくない者が先生に近付くかもしれないから、リイド社の人たちはSPのような動きで先生を守っていたのかもと、またまた妄想が広がって行く。
作品だけでなく先生の存在自体が我々ファンを楽しませてくれた。金庫の中に最終回の原稿が入っていると先生が言っていたのをテレビで観た事がある。生きているうちに最終回を知りたい。でも、永遠に終わらないで欲しいという気持ちもある。作品は永遠。素晴らしい作品を作っていただき感謝です。ご冥福をお祈りします。
(コラムニスト・なべやかん)