不仲コンビ「おぼん・こぼん」別々の楽屋で記者が体感したガチな距離感 「目を合わせない漫才」に衝撃

 TBS系「水曜日のダウンタウン」(以下「水ダウ」)で、その“不仲”が話題となっているベテラン漫才コンビ「おぼん・こぼん」だが、6日放送回で仲直りプロジェクト企画のファイナルを迎えるという。9月29日放送回では「仲たがいの原因」が企画プレゼンターを務めるナイツによって明かされたが、本人たちの説明はまだ公にはされていない。その結末は放送を待つとして、そもそも主戦場である演芸場の舞台裏で2人はどのように過ごしているのだろうか。実際に体感した現場の姿をリポートする。

 漫談家・ケーシー高峰さん(享年85)の死去が報じられた2019年4月10日、故人と半世紀近くも交流のあった2人が出演していた浅草・東洋館(旧フランス座)に足を運んだ。追悼コメントを直接聞くためだった。

 コンビは別々の楽屋にいた。舞台の下(しも)手裏に楽屋への出入口がある。靴を脱ぎ、短い階段を上ってすぐの部屋に、おぼんがいた。ケーシーさんの思い出話を一通り聞いてから、「では、こぼん師匠にもお話をうかがってきます」と伝えると、「聞かなくていいですよ。僕の話だけでいいでしょう。お疲れさまでした!」と笑顔で送り出され、記者が靴を履くまでを見届けられた。

 その流れにあらがえず、ロビーに出て途方に暮れた。その日は現場に来られなかったマネジャー氏に電話したところ、「こぼんも取材してください。伝えてますから」。きびすを返して楽屋に戻った。入口すぐの楽屋にはおぼんがいたが、部屋をのぞくと誰かと会話中だ。そのスキに、見つからないように部屋の前をササッと通り過ぎ、廊下の奥、突き当たり右手にある楽屋に入ると、こぼんが待ち構えていた。

 こぼんからも思い出話をひと通り聞き、「先ほど、おぼん師匠にもうかがったので、お2人の話をまとめさせていただきます」と伝えると、「いや、アレはいいでしょう」とポツリ。「まぁまぁ」とその場をやり過ごしながら退散したが、出口に至る手前で油断していたため、おぼんとバッタリ。「あれ?」「忘れ物を取りに戻りまして…」と苦しい言い訳をしながら、そそくさと靴を履いて立ち去ったのだった。

 当時、舞台上やテレビカメラの前だけの「ネタ」だと思っていたが、実際に現場に行くことで「ガチンコ」だと実感した。その場でも、肝心な部分である不仲原因を尋ねたが、そこはスルー。おぼんは「あの番組(水ダウ)が放送されてから、若い人が東洋館に来るようにはなりました」と現象面のみを語った。

 それから2年半近くにもなるが、事態は変わっていないようだ。9月29日放送回では、ナイツの塙宣之と土屋伸之によって、不仲原因として「2015年の漫才協会選挙事件」が指摘され、さらには舞台上で「どちらが横山やすし師匠に世話になったか」を巡って殴り合いになった「第2の事件」が追い打ちをかけたとも明かした。もっとも、当の本人たちは沈黙。2つの事件は表面化した氷山の一角で、2人にしか分からない長年蓄積されたものが水面下に潜んでいるのかもしれない。

 それはさておき、舞台は面白かった。2人は上(かみ)手と下(しも)手から別々に登場し、2メートルほど離れて目を合わせず、手にしたハンドマイクで客席を向いて話す。漫才の定番であるスタンドマイクはなく、顔を近づけることはない。コロナ禍の前から「ソーシャル・ディスタンス」を実践していた。「仲が悪いので(出演時間の)15分間、目を合わせない」「何年もプライベートでは話していない」といった“水ダウ”ネタも挟みながら漫才を進行し、最後はタップダンスをさらに離れた場所で披露して、上手と下手へと別々に退場した。

 「距離のある漫才」「目を合わせない漫才」。新鮮で衝撃を受けた。不仲原因はファジーなまま、唯一無二の漫才スタイルを貫いても面白いと、あくまで芸人に対する観客目線でそう思う一方、テレビによって定着したイメージを維持するために「仲が悪い」さまを演じるようになると本末転倒。そこは和解して、不仲漫才にピリオドを打ち、原点回帰という道も期待したくなる。

 ただ、言えることは、こうして取り上げられている時点で、「おぼん・こぼん」は1980年の「お笑いスター誕生!!」や漫才ブーム以来の、いや、むしろ「芸以外の部分」で特化されたという意味では、当時以上に旬な存在になっている。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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