「これって逆パワハラ?」上司からに限らない 同僚や部下からの言動も 元アイドル弁護士が解説
会社で、働きにくさを感じることはありませんか?上司からの恫喝や暴力など、明らかにパワハラだと言えるケースであれば、警察や弁護士に相談するなどして解決策をみつけやすいかもしれません。
しかし、中には部下からの無理難題や非協力的な態度でお悩みの方もおられるのでしょう。こういったケースは「パワハラ」とは言えないのでしょうか。
昨年、いわゆる「パワハラ防止法」が施行されました。この法律の指針として厚生労働省が定義したところによれば、パワハラとは「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。」となっています。
さてここで、注目すべきはこの指針が「優越的な関係」の解釈として、「職務上の地位が上位の者」に限らず、「同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの」「同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの」を含んでいる点です。もはやパワハラは上司からのものに限られないのです。「逆パワハラ」などという新しい用語も登場しているようです。
コロナ禍もあいまって、多くの会社や事業主さんが人集めに苦戦されていて、せっかく入ってくれた従業員に気を遣うあまり、注意ができないという切実な問題があるようです。最近では二言目には「パワハラだ。労基署に報告に行く!」というのが口癖になっている若い従業員も増えたと聞きます。SNSに実名を挙げて公開される恐怖もあるでしょう。
しかし、適切な注意や指導、すなわち、平均的な労働者から見て合理性がある注意や指導は、パワハラにはあたりません。かえって、いちいち反抗して業務を遅滞させることこそ、部下によるパワハラとして問題視できる場合もあります。
なんでも法に訴えれば良いというものではありませんが、働きやすい職場環境を作るため、上司と部下、それぞれの立場から意識を高めることは必要です。次回、どのような場合に「逆パワハラ」と言えるのかを解説します。
◆平松まゆき 弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。