客数減のコンビニ 生き抜く課題は人件費抑制のため「深夜の無人化」 酒やたばこの年齢認証も 識者が解説
2022年の幕が開けた。新型コロナウイルスに直面して2年が経過したものの、先行きは見えない。流通業界もコロナ禍の影響に左右されているが、日本の生活に欠かせない存在となっているコンビニエンスストアの状況は今年、どのように変わっていくのだろうか。流通アナリストの渡辺広明氏は、よろず~ニュースの取材に対し、「購入客減の時代を生き抜くには人件費を抑えられるかがポイント」と指摘し、「深夜の無人化」を実現できるかどうかを注目点に挙げた。
コロナ禍では「コンビニで実際に買い物をする客」が減少しているという。渡辺氏は「コンビニ店内で実際に購入した国内の延べ人数ですが、19年は約174億人だったのが、コロナ禍に突入した20年は10・2%減の約159億人と約15億人も減少し、下落率も過去最大になりました。21年はさらに減っていると推測されています」と説明。さらに、同氏は「コロナ禍によるテレワークの普及で外出する機会が減るなど、国民の行動変容が起こり、国民的小売業であるコンビニの客数として如実に表われています」と指摘した。
確かに、テレワークの普及で会社に出勤しなくなると、それまであった「仕事前&帰り」の時間や、取引先への訪問機会などがなくなった。仕事以外でも「不要不急の外出」への自粛が求められたことで、街に出かけて買い物やレジャー、飲食する機会なども減り、外にいる空き時間にふらっとコンビニに立ち寄る機会は少なくなった。お客さんが減れば売り上げも減る。では、どうするか?
渡辺氏は「人件費をどう抑えるか」と今後のテーマを掲げる。同氏は「ローソンは深夜の完全無人化を計画したものの頓挫した経緯があります。その要因は、セルフレジで酒やたばこの年齢認証ができなかったことにある。コンビニでは酒とたばこの売り上げが3分の1と言われていて、深夜にはその比率がさらに上がるため、この年齢認証ができて、深夜の無人化ができるかどうかは大きい。これはコンビニ業界全体に言えることです」と解説した。
そこで、記者も年明けの深夜にコンビニのセルフレジで購入してみた。支払方法の選択から「電子マネー」を選び、次に「レジ袋の有無」で「不要」を選択してから、購入商品のバーコードをスキャン。続いて「ポイントカードはお持ちですか?」という表示が出たので、dポイントカードのバーコードを読み取ってポイントを加算できた。最後に自分が選んだ支払方法で決済完了。慣れると簡単だが、問題は、売り上げの3分の1を占めるという「酒やたばこ」の年齢認証だ。
渡辺氏は「現状はお客様の自己申告で、外見的に年齢が微妙な人に対して店員が声がけをするスタイルです。実態としては目視のため、対応が感覚的で難しくなっていますが、そこでセルフレジでカードリーダーに免許証などを入れて認証するか、事前に年齢認証の登録を店員にしてもらってアプリで発行してもらうといった対策を取っています。いずれは、マイナンバーカードが活用される可能性はあると思います」と説明。今後に向けて「セルフレジはいずれも実験段階。人手不足解消のために、国が後押しするかどうかも注目です」と付け加えた。
それならば…と、記者は持参した運転免許証を手に、缶チューハイのセルフレジ決算に向かったが、作業の工程で「免許証をカードリーダーに入れてください」などといった表示が出ることもなく(その機器も周囲に見当たらず)、すんなり購入できてしまった。
店のスタッフに尋ねると、「確認が必要な時にはこちらからお声がけします」とのこと。確かに、どう逆立ちしても未成年には見えない中高年のおじさんには必要ない。一目瞭然の場合はスルー。そこは臨機応変に対応しているようだ。AIなどによる、しゃくし定規な対応が100%ということではなく、まだ、「人間の目」というアナログ的な部分が残されていたことに、なぜかホッとした。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)