魅惑のレトロマンション・秀和レジデンスの図鑑がマニアックすぎ 建て替え進むも「今では再現できない」
ビンテージマンション「秀和レジデンス」シリーズを特集した書籍「秀和レジデンス図鑑」(トゥーヴァージンズ)が22日に発売され、内容が「マニアックすぎる」とネット上で注目を集めている。著者の谷島香奈子氏(43)とhaco氏が、今では再現が難しいという秀和デザインへの愛を語った。
「秀和レジデンス」は、1964年の「秀和青山レジデンス」を皮切りに造られたマンションシリーズ。かつてあった不動産会社「秀和」が、都内を中心に展開した。白い塗り壁や鉄製の柵付きバルコニーなどに独自のデザインを持ち、現代でも人気を博している。
シリーズ第1号の「秀和青山-」が老朽化により建て替えられることを受け、「今の時代に書籍として残したい」(谷島氏)と「秀和レジデンス図鑑」の制作を始めた。同書は、マンションごとに塗り方が異なる壁の模様、バルコニーや床タイルの違いなどを写真で紹介している。
著者2人の“マニア歴”は10年以上。古い建物が好きというhaco氏は「今のマンションにないディテール」が魅力だと話す。塗り壁や床タイルなど、手間と費用が多くかかるデザインにひかれるといい「社会を反映しているというか、高度成長期の『お金がかかっても技術を試してみよう』という勢いを感じる。今の時代にはない、心の豊かさを感じます」と目を輝かせた。
同シリーズのマンションは築後50年以上がたち、修繕が欠かせない。haco氏は「タイルを全部張り替えてしまおう」などと建物が「ピカピカ」に作り変えられてしまうことを危惧。「今から(同じものは)作れないので残してほしい。秀和の価値に、秀和に関わる人みなに気づいてもらいたい」と各マンションの住民、管理組合に切望する。
自らも「秀和」のマンションに住み、不動産業界で働く谷島氏によると、職人の引退や費用・安全面などの問題から「今の時代ではなかなか同じものが再現できない」という。バルコニーの鉄柵がアルミ製に替えられることを例に挙げ「(鉄製は)さびてしまうと落下する危険性がある。(職人がいないため)1つ1つ作ればできないことはないが、とてつもないお金がかかるので現実的ではない」と課題を口にした。
秀和レジデンスは134棟が現存するが、各管理組合同士のつながりはほとんどない。「同じような建物なので、それぞれが抱えている問題は近いものが多い」と話す谷島氏は「秀和ブランドを守っていけるように、今の形を最大限に維持しながら性能を上げていける方向になるよう(管理組合の)つながりを作れたら」と目標を掲げた。
(よろず~ニュース・今井 佳奈)