グレート・カブキ流「塩おでん」は絶品!珍しい里芋が人気、コロナ禍の冬を越した切り札メニューに

 「東洋の神秘」の異名を持ち、日米マットで活躍したプロレスラー、ザ・グレート・カブキ(本名・米良 明久)が東京・小石川で営む居酒屋「BIG DADDY酒場 かぶき うぃず ふぁみりぃ」は、コロナ禍での感染対策と時短営業を続けながら、プロレスファンの常連客でにぎわっている。カブキが妻の安子さんと共に腕を振るう数々のメニューから、旬の一品や名物を紹介しよう。(文中一部敬称略、価格は税別)

 まずは、冬限定のメニュー「塩おでん」が気になった。カブキは「うちは、ゆずこしょうが持ち味。ゆずこしょうで食べるのは何が一番いいかと考えたときに、塩おでんじゃないかと。鶏ガラで出汁(だし)をとって、そこにおでんのネタを沈めて、鶏ガラの味を染みこませ、さっぱりと、大分のゆずこしょうで食べるという。だいたい九州のおでんがそうなんですよ」。自身は宮崎県出身。子どもの頃から食べてきた故郷の味だという。

 「塩おでん」のネタで気になるのが里芋だ。安子さんは「おでんでは、じゃがいもを入れたりしますが、うちは里芋です。珍しいですし、これがまた人気あります」と説明。里芋といえば、山形県のソウルフード「芋煮」のイメージだが、安子さんは「うちはもっと大きく、里芋が丸々1個入っています」と付け加えた。

 さっそく、塩おでんの3点盛り(500円)を注文。薄味の出汁に、大根、さつま揚げと共に、直径6センチほどの里芋が入っていた。カブキは「これでも(里芋は)小さくなってるんですよ。もうちょっと大きいのがあるといいですけどね」。それでも、十分な大きさだ。何よりも食感がいい。里芋だけに粘りがある。ジャガイモのホクホク感とは違い、ねっとりと口の中で溶けていく。これは家で作るおでんにも応用できると感じた。

 春の訪れを感じる時候となり、塩おでんの提供期間も残り少なくなったが、カブキは「3月中旬くらいまでやるつもりです」とのこと。春以降の限定メニューは「まだ決まってませんけど、その時に、季節のもので考えて作ります」と予告した。

 飯田橋で18年、小石川で6年と四半世紀近く続く同店の創業当時からの名物メニューの一つが「かぶちゃん煮込み」(660円)。大ぶりな牛筋肉とこんにゃくが濃厚な赤だしみそに絡まり、大量のネギがトッピングされている。煮込みというより、ワイン入りのビーフシチューのような見た目だが、カブキは「ワインは入ってません。みりんと酒です」。腹にズシリと響くボリュームだ。

 また、カレーちゃんこ「連獅子」(980円)は締めの一品として人気。訪れた日も、カウンター8席、テーブル席3席の来店客は閉店が近づく午後7時半近くになると次々に注文していた。1人前の鍋には牛バラ肉に、春菊や白菜など野菜も豊富。カレースープを残し、ご飯を入れてチーズリゾットにもしてくれる。カブキは複数の鍋を同時に火にかけ、手際よく調理していた。73歳の背中は現役感にあふれていた。

 さらに、ドリーテリー焼き(730円)、アブドーラ・ザ・ブッダ串(400円)、阿修羅ハラミ串(580円)、アッジーフレアー(550円)など往年の名レスラーにちなんだメニューが続く。カブキは「ドリーテリー焼きはしょうゆではなく、アメリカのバーベキューソースを使った鶏の照り焼きです。ブッダ串は豚バラ、阿修羅は牛のハラミ、フレアーはあじフライです」と解説。“本家”のリック・フレアー、ドリー&テリー兄弟のザ・ファンクス、阿修羅原の写真パネル、壁に飾られたドリー・ファンク・ジュニアのリングジャケットを眺めながら食べる味は格別だった。

 また、ドリンクメニューの人気は「赤の毒霧」と「緑の毒霧」(各480円)という名のハイボール。1981年に米マットでカブキのキャラクターが完成するが、ファンの度肝を抜いたのが毒霧だった。「最初は、いろんな色の毒霧を作った。赤青黄色緑とか。どの色がきれいに上がるかと思ったら、やっぱり、赤と緑だったですね」。その言葉通り、実戦ではこの2色が噴射されたが、完全引退から5年後の現在もなお、店内では赤と緑のミストがジョッキを彩る。

 飲食店にとって厳しいコロナ禍の冬を越した。カブキは日々、厨房というリングに立ち続ける。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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