ウクライナ侵攻で核戦争への不安 世界で核シェルター需要急増も日本の普及率わずか0・02%の現実
ロシア軍のウクライナへの侵攻で、ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用を示唆する発言を威嚇的にしたことを受け、核戦争に対する危機感が世界的に高まっている。女優でジャーナリストの深月ユリア氏は「有事」に備えた核シェルターの需要が高まっているにもかかわらず、日本での普及率が世界から見ても極端に低いことを指摘した。
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日々緊張が高まるウクライナ情勢で、核戦争も現実味を帯びている中、現在、日本国内の核シェルターの需要が急増している。核シェルターは、核戦争勃発時に放射線から身を守る設備だが、核のみならず、地震・津波・火災に対する防災としても有用だ。諸外国には有事の際に国民が避難する核シェルターが普及しているが、NPO法人「日本核シェルター協会」によると、日本の普及率はたった0・02%だったという。
同協会によると、各国の「核シェルター普及率」は、スイス・イスラエル(ともに100%)、ノルウェー98%、米国82%、ロシア78%、英国67%、シンガポール54%、韓国ソウル市323・2%(※人口比の3倍以上)、日本0・02%となる。
日本は「日米安保条約と憲法9条があるから安全」という考え方もあるが、オバマ政権以来、米国は「世界の警察官」を辞めてしまった。日本は被爆国であり、ロシア、北朝鮮、中国に囲まれているにも関わらず、有事の際に国民を守るシステムが不十分である。しかし、ウクライナ戦争で「平和ぼけ」といわれる日本人の意識に変化が起きたのか、複数の核シェルター会社に問い合わせたところ、どこも「問い合わせが殺到している」「注文が急増している」、さらに「核兵器のみならず、ロシアのサリンなど生物兵器にも対応するシェルターの需要が増えている」とのこと。
創業60年の「株式会社シェルター」(本社・大阪府羽曳野市)の担当者は「日本の近隣には核の脅威が絶え間なく存在しています。日本に地下街は数多くありますが、地下にスペースがあるだけでは核シェルターとして機能しません。実は重要なのは換気設備であり、これがなければ放射性物質から身を守ることはできないのです。 放射性物質は、少なくとも2週間は降り続けるといわれています。 日本は、国家レベルで大量破壊兵器への備えが足りないといわざるを得ません」と説明する。同社では、イスラエル製、スイス製、米国製、ドイツ製などの核シェルターを販売。室内据え置き型のシェルターは機種にもよるが、150万~300万円ほどで購入可能だという。
核シェルター普及率100%のスイス人男性(41歳、都内在住)に聞いたところ、「スイスには有事の際に対応する為の民間防衛白書があります。全ての家庭にも核シェルターが配備されていて、2週間分の食料を貯蔵しています。ウクライナ人はポーランドに避難していますが、日本は島国なのですぐに避難できる国がありません。核シェルターは必要です」と指摘した。
核兵器が投下されたら想定される被害は、国際戦略研究所(IISS、本部・ロンドン)や国際平和拠点ひろしま等の資料によると、例えば、100キロトン級の原爆(広島に投下された原爆は15キロ)が爆発すると、半径2キロ以内の人間は即死する。300キロトンの原爆なら、周辺126平方キロメートルの人間は即死する(数十万人が死亡)。
最新の核兵器の威力は、広島・長崎型の何万倍にもなり、広島・長崎に投下された原爆の何百万倍もの放射線を放出するので、想定される被害はまさに地獄図だ。
生き残ったとしても、放射線は、人体の細胞を破壊し、血液を変質させ、肺や肝臓等の内臓を侵すので、2週間、身を潜められる核シェルターが必要になる。
公共の核シェルター創設は以前より国会で議論されたものの、お蔵入りになってしまったが、世界情勢が激変している今こそ、国家事業として進めていくことが急務ではないだろうか。
(ジャーナリスト・深月ユリア)