日本人に「うつ」が多いのは“幸せホルモン”不足が原因か コロナ禍で発症者急増 対処法を専門家に聞く

 コロナ禍で鬱(うつ)状態になる人が増えていると指摘されている。女優でジャーナリストの深月ユリア氏は「日本人に鬱が多いのは脳内ホルモンである『セロトニン』が不足しているから」という説を掲げ、その改善方法を専門家から聞いた。

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 年度末は一部の人々にとって就職や転職、入学や卒業など「転機」でもあるが、 「新しい環境でうまくやっていけるのだろうか」という不安を抱えている方もいらっしゃるだろう。そして、長期的に不安を抱えて我慢をし続けると、鬱病のような症状が出やすくなる。

 厚生労働省のデータによると日本人の6%もが鬱病を経験していて、コロナ禍で鬱病・鬱病状態のような人の割合は倍増しているという。なぜ日本は鬱病が多いのか。

 一説には日本人は脳内ホルモンであるセロトニンが不足しているという。セロトニンは不安を抑え、精神をリラックスさせる物質だ。ストレス状態の時に、脳全体にノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)やドーパミン(喜び、快楽など)などの神経伝達物質が放出されるが、セロトニンはそれらをコントロールし、精神を安定させる働きがある。

 遺伝子学的にみると、セロトニンが多いのはL型(ロング)、セロトニンが少ないのはS型(ショート)で、日本人の 80.25%がS型遺伝子を持つという。なお、ラテン気質で楽観的といわれるスペイン人のS型は46.75%、アメリカ人は44.53%、南アフリカ人27.79%である。(参考・KATSUIKU ACADEMY)

  ビジネス心理コンサルタントで、日本マインドリーディング協会理事の岸正龍氏も 「セロトニンの量を調節するセロトニントランスポーターというたんぱく質の数が多いと、気持ちが安定し、安心感が持て、逆に少ないと不安傾向が高まるという説がありますが、それを裏付ける論文も出されています」と同説を支持している。

 なぜ日本人がS型が多いのか?

 麻布メンタルクリニックの公認心理師・臨床心理師の黒岩貴氏によると、 「日本人は長く農耕民族でした。 セロトニンは肉に多く含まれますが、肉を食べる習慣は最近になってのことです。日本人は、腸が長い、海藻を消化できる、アルコール分解が不得意、疫病に強い、少しネガティブ、という特徴があります」という。そして、脳内ホルモンのバランスを保つためには「(1)バランスの良い食事、(2)バランスの取れた仕事と遊び、(3)仲間との語らいやハグ、カウンセリング等のコミュニケーション…が有効です。(1)について、セレトニンは牛肉等に多く含まれます。また、朝の光を浴びると増えて昼間活動的になります。逆に夜はメラトニンと言うホルモンが出て眠くなります。朝はカーテンを開け、夜はスマホ等の光をあまり浴びないことがお勧めです」という。

 心理学者の富田隆氏によると、 「日本人に自殺や鬱病が多いこはこの『不安遺伝子』が一因かもしれませんね。ただ、遺伝的要因で全てが決まるものではなく、環境要因も重要です。過密な都市生活、周囲からの同調圧力、働き過ぎによる過労なども不安や鬱の原因になっています」と脳内ホルモン以外に環境要因があることを指摘した。

 鬱防止の対策として、冨田氏は「好きなことに没頭したり、成功体験を積み上げ自信をつける一方で、瞑想法や呼吸法、ヨガ、禅などで、不安を克服する訓練も有効です。また、簡単なものとしては、日光浴も有効です。これはTシャツで腕を出した状態なら15~30分程、週に2、3回でOKです。日光を浴びることで、ビタミンDやセロトニンが体内で作られます。日本では紫外線を怖れる傾向があまりにも過剰になり、若い女性や寝たきり老人の間でビタミンD不足が生じ、鬱病や癌などさまざまな病気の原因となっています。『対処可能性』を高めておくことも大切ですが、 セロトニンは『幸せホルモン』と呼ばれているように、幸せな生活を送ること、積極的に楽しい体験を増やすこと、仲間と喜びを分かち合うことはもっと大切です」という。

 日本人はその気質ゆえに「真面目」「平和主義」「勤勉な努力家」でもあるが、無理をしがちで「過労死」という言葉ももはや国際共通語ともなっている。黒岩氏、富田氏の言うように、なるべく食生活、環境、心理的な面でストレスを減らして、一度きりの人生を自分らしく楽しく生きていきたいものだ。

(ジャーナリスト・深月ユリア)

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