石油価格の暴騰でプーチン氏は3210億ドルの戦費を得る!?ロシアに依存しないエネルギー方策 識者が語る
ウクライナに侵攻したロシアへの経済的な制裁措置として、西側諸国がロシアへのエネルギー依存から脱却し、再生可能エネルギーの推進などを模索している。女優でジャーナリストの深月ユリア氏がこうした動きの影響や識者の見解をまとめた。
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【石油・天然ガス取引はプーチンに戦費を供給する】
長引くウクライナ戦争。前ロシア財務省のアレクセイ・クドリン氏をはじめとしてアナリストの予想によると、SWIFT(国際銀行間通信協会)からの排除など西側の対ロシア制裁により、ロシア経済は今年、10%以上のマイナス成長に陥り、デフォルトの可能性も高まった。しかし、それでもウラジーミル・プーチン大統領がウクライナを諦めていないのは、西側諸国がロシアの石油・天然ガスの輸入をいまだに止めていないからだろう。
ロイター通信の報道によると、石油価格の暴騰により、ロシアは4月中に96億ドルの利益を得るという。また、米ブルームバーグの報道によると、「米国とEUによる中途半端な制裁は、石油と天然ガスのコストを押し上げるのに役立つ。その受益者は、ロシアを含む石油生産国だ。プーチン大統領は3210億ドルの利益を得る可能性がある」という。
【エネルギーをロシアに依存しない方策】
ウクライナの国際政治学者のアンドリー・グレンコ氏は「段階的にロシアとの石油・天然ガスの取引を停止すべきだ」と主張する。同氏は次のように語った。
「現状、石油と天然ガスに関しても段階的に制裁をしようという動きが出ています。既にアメリカとイギリスは現在のロシアの石油会社と契約が切れたら、新たに石油を輸入しないと表明しています。またヨーロッパ諸国もロシアとの天然ガス取引を段階的に減らしています。石油も天然ガスもロシアから輸入しなくても、中東やベネズエラから輸入すればよいのです。経済制裁の効果は出ていますし、いずれロシアと石油・天然ガスの取引を停止し、ロシアを経済封鎖すべきだと思います。それで世界経済に打撃があっても、戦争が長引く方が世界経済の損失が大きいのではないでしょうか」
ロシアから石油・天然ガスを輸入することは、プーチン大統領に戦費を供給するようなものだ。段階的に取引を停止し、代替手段に移行すべきだろう。
国際エネルギー機関(IEA)は3月3日、欧州がロシアからの天然ガス輸入量を1年以内に3分の1以上削減するための具体的な10方策を発表した。
・ロシアと新たな天然ガス購入契約を一切結ばない。
・ロシアからの天然ガス購入を他国からの購入に切り替える。
・最小限の天然ガス貯蔵を義務づける。
・風力と太陽光で新たな発電設備の建設を加速する。
・既存の低炭素電源であるバイオエネルギーと原子力の発電量を最大化する。
・天然ガス価格の上昇にともなう電力価格の上昇から脆弱な消費者を守るため、たなぼた利益に対して短期の課税措置を講じる。
・天然ガスボイラーのヒートポンプへの切り替えを加速する。
・建物や産業部門におけるエネルギーの効率化を加速する。
・消費者に対し温度自動調節器の設定を一時的に1度C下げるよう促す。
・柔軟な対応が可能な電力システムの多様化と脱炭素化への取り組みを強化する。
【日本は「働き方改革も」】
欧米のみならず、日本もロシアから石油・天然ガス輸入を止めるべきだ。ロシアの天然ガス市場のうち、約1割は日本からの輸入である。日本の場合、テレワークの推進も効果的だろう。まん延防止措置の解除後にテレワークを廃止・縮小し、「働き方改革」をコロナ以前に戻そうという企業が増えてしまい、マイペースな働き方に馴れた社員たちは悲鳴を上げている。テレワークで賄える業務は引き続きテレワークを維持した方が、家庭内の電気代が若干増えても、オフィスや自動車のエネルギーを削減できて、体力的にも無駄なエネルギーを使わず、心身の過労による病気も防げるのではないだろうか。総合的に省エネに貢献できるだろう。
一刻も早く、ロシア軍が撤退し、ウクライナに平和が戻ることを切に願う。
(ジャーナリスト・深月ユリア)