乙武洋匡氏 渋谷から国会まで自力で歩き暴力反対訴える「僕たちは無力じゃない」
参院選で東京選挙区(改選6)に無所属で立候補した作家の乙武洋匡氏(46)が、投開票を翌日に控えた9日、東京・渋谷の選挙事務所から国会議事堂までの約5・3キロを、自らの足で約12時間かけて歩ききった。
生まれつき両腕と両脚がない乙武氏は、安倍晋三元総理が8日に銃撃され死去したことを受け、選挙運動の最終日に自らの足による「乙武大行進」を掲げて敢行。暴力への不服従を示すため、朝8時に渋谷を出発、全身を懸命に動かしながら、午後8時前、国会前に到着した。「これまで歩いた人生最長は数百メートル。腰が痛くて大変で、足がもげそう」と、他の追随を許さないブラックジョークを披露しつつ、目的地で待機していた約300人を前に「気にくわない相手、意見を暴力で口をふさぎ、命を奪ったら民主主義ではない。暴力に抗議の声を挙げるメッセージが絶対に必要。僕はツイッターもユーチューブもノートもやったが足らない。暴力反対のメッセージを伝えるため、歩かせてくれと伝えました」と経緯を説明した。
街頭演説の予定が決まった後に、「乙武大行進」への変更を申し出た。「僕のわがまま。どうしてもこれがやりたかった。だけど、これは選挙運動じゃない」と不安を抱えながらの行動だったが、ゴール地点での感慨は別のものだった。ユーチューブの生配信はゴールの瞬間に9000人超の視聴者が集い、ツイッターではハッシュタグ「乙武大行進」が一時トレンド入り。「結果的には私の目指す社会が実現したように思います。たった一人の決断から始まったことです」と語り、「僕たちは無力じゃない。たとえ小さな力でも集まれば変化を起こせる、社会に変化を与えられる。皆さん、今日のことを忘れないで下さい」と訴えた。
苦戦が伝えられる今回の選挙。「たとえ私が政治家になれなくても、政治を、社会を諦めないで下さい。私たちには社会を変える力がある。ありがとう!」。乙武氏は大きな拍手を小さな全身に浴び、初めての選挙戦を終えた。
(よろず~ニュース・山本 鋼平)